■第三回■
エリア88(新谷かおる)

おれたちは外人部隊… 紙キレよりも薄い己の命…
 燃えつきるのにわずか数秒…

【作品概説】
 主人公・風間真(かざましん)はヤマト航空の海外実習生だったが、親友・神崎(かんざき)の謀略により外人部隊に入隊、中東・アスラン王国の政府軍戦闘機パイロットとして最前線であるエリア88に配属されてしまう。軍を抜けるには3年間、軍務に服するか違約金150万ドルを支払わなければならない。再び日本に帰るため、地獄の日々の中、真は悲壮な覚悟で戦い続ける。
【所感】
 かなり古い作品ではある。登場する兵器も古い(注1)し、現在とは色々と世界情勢も変わってしまっている。それでも、今でも時々読み返してしまう大好きな作品である。なんと言ってもストーリーが面白い。一刻を争うような作戦や地上空母(注2)、新しい基地(注3)、P4との決戦など燃える展開が多いし、元々、この作者の得意分野であろう人間ドラマもきちんと抑えている。戦闘とドラマのバランスが実に良い。
 真やその他の登場人物達はは外人部隊であるから、色々な国の人々がいて、それぞれに入隊した事情がある。当然、イイヤツも悪いヤツもいる。それでも皆、同じように死んでいく。時には理不尽とも思える死すらもある。それがドラマに深みを持たせている。また、戦闘機をはじめとする様々な兵器、サバイバル術、政治などにも深い造詣が見られ、作品に現実味を与えている。ストーリーの面白さだけでなくこういった部分が、この作品を一段と深いものにしているように感じられる。そして時々書かれる詩(注4)が余韻を残す。読んでいてその世界に引き込まれるような作品なのだ。
 最後、真は記憶喪失になってしまうが、彼が救われるにはそれしかなかったのではないかと思う。戦争で血塗られた手で涼子を抱くことはできない、と悩んでいたし、仲間達はほとんど死に、親友を自らの手で殺めた彼が普通の人間として日本という国で生きていくためには記憶をなくすしかなかったのだろう。悲しくも未来への希望を含んだラストシーンは、何度読んでも不思議な感動を呼び起こす。
 しかし七人にケンとウォーレンが入ってくるとは思わなかった…。(2005年2月19日)

(注1)マクダネル・ダグラス社のF-15イーグルが最新鋭となっている時点でお分かりだろう。
(注2)本来、海で運用するはずの空母を砂漠で使うというもの。そのコンセプトはちょっとスゴイと思う。
(注3)飛行機の着陸にフックが必要な、山をくり抜いたような基地や空母を海岸に常駐させて基地とするなど、発想が面白かった。
(注4)一番最初に書いてあるもの(『おれたちは外人部隊…』ってヤツ)もその一つ。最初の頃は各話の最後に必ず書かれていた。

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