■第五回■
神聖モテモテ王国(ながいけん)

民主主義がその限界を露呈しつつある今、人々は新しい政治体制を望んでいる−
 大いなる千年王国。男なら誰もが夢見た愛と徳による絶対王制。今、歴史的実験が一組の親子により進められようとしていた。

【作品概説】
  知らない人がこのタイトル(注1)を見たら、「なんだこりゃ」と思うだろう。だが、一読すればこのタイトルはこれ以外にはありえないとも感じてしまう。この作品は上記の文章から始まったが、内容はと言えばそんな大仰なものではなない。記憶喪失の少年・通称オンナスキー(注2)の前に現れた、彼の父親と名乗る宇宙人、通称・ファーザー。『ナオンにモテるため』に活動するファーザーとオンナスキーの非日常的な日常を描く。
【所感】
 何がスゴイかと言えばやはりファーザーのキャラの立ちっぷりだろう。下半身はなぜかパンツ一丁。頭には赤色灯、耳にはドリルのようなものが生えている。果てしなく弱いが、死んでも死なない。そして独特の口調に乗せたヤバ気な台詞の数々…。しかもホントに宇宙人か?と言いたくなるくらいに地球の文化に精通している。元ネタがある台詞が多く、その分野も多岐にわたっていて使い方もセンスに溢れている。オンナスキーも絶妙のツッコミを見せる。作者は天然ではなく(注3)、考えてこれを作っているようだ。
 ファーザー以外にもアンゴルモア大王(注4)、トーマス(注5)、ブタッキー(注6)など個性的な登場人物が多い。そんな彼らにもヒケを取らないのが、しばしば登場するヤクザ。『哭きの竜』(注7)ライクな外見の彼らはあくまでエキストラであり、名も無き一回限りのキャラクターではあるが、彼らの台詞もまたセンスに溢れている。その他にも、作中作である『電光石火供えガイ』もまた、ファーザーとトーマスによる合作だけあり、強烈なインパクトを与える。
 読み慣れるまでは不快感や違和感を覚える人も多いだろう。私自身も、連載20回目くらいまでは拒絶反応に近いものを持っていた。しかししばらく読むうちに感化されてしまったのか、傑作の一つに挙げたくなるほどに評価が変わった。とにかく、この独特のセンスは言葉で説明するよりもぜひ、一読して感じ取っていただきたい。
 週刊少年サンデーで連載開始、その後一時休止の後、再開。そして長い空白期間をおいてヤングサンデーで連載が再開されたが、現在はまたも連載休止中(?)。再開が望まれる作品である。(2005年3月27日)

(注1)編集部では当初、『モモ王』と呼ばれていたが、作者の意向により愛称は『キムタク』となった。
(注2)オンナスキーはあくまで通称。本名は深田一郎。ファーザーのその時の気分により通称はコロコロ変わる。
(注3)連載されていた週刊少年サンデーには毎回、連載作家のコメントが乗せてあったが、そこに書かれていた作者のコメントは他の作家と比較して平々凡々なヒネリのない実に普通人らしいものばかりであった。
(注4)ファーザー達のアパートの隣に住む謎の人。『変なメーテル』としか表現のしようのない服装をしているが、スゴイ団体の関係者らしい。
(注5)アンゴルモア大王の仲間。欲望に忠実で、ヤバくなるとすぐ逃げる。ファーザーよりも弱い。彼は読者に評判が悪いらしい。
(注6)外見はどうみても真性オタクなのに、なぜか異常なまでにナオンにモテる。これはまるで自分がモテる妄想を抱いているオタクに対して、「実際にそうなったら、こんな感じだぞ」という作者のメッセージにも感じられる。バックには大物がついているらしい。
(注7)能條純一作の麻雀漫画。そのうち紹介します。

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