■第七回■
デビルマン(永井豪)

『お前たちこそ本当の悪魔だ』

【作品概説】
  少年・不動明(ふどうあきら)は親友である飛鳥了(あすかりょう)に、悪魔(デーモン一族)の侵略が始まっていること、そしてデーモンから人類を守るためには、悪魔の能力を持ち人間の心を持った者・デビルマンになるしかないことを教えられる。人類のため、愛する者のためにデビルマンとして戦い続ける明であったが、その中で同時に人間の醜さも知っていくこととなる。一方、了は世の中が恐ろしいまでに自分の考えた通りに進んでいことに疑問を持ち、ついには自身の秘密を知ることになる。果たして人類と悪魔の戦いはどのような結末を迎えるのか。
【所感】
 この作品は『マジンガーZ』(注1)や『キューティーハニー』(注2)とともに、永井豪の代表作として知られている。TVアニメで見た、という人もたくさんいるに違いない。私も再放送であったが、見たことはある。しかし原作漫画版を読んだことがある人は少ないのではないだろうか。そんな人達には、是非とも漫画版を読んで欲しい。
 アニメ版と漫画版での最も大きな違いは、飛鳥了の存在であろう。彼は主人公である不動明を悪魔との戦いの世界へと誘う役目を持って登場した。そして度々、明に助言を与え、サポートする。彼は当初、狂言回しのような役目を持ってこの作品に登場していた。しかし物語後半、彼はさらに重要な役目を持つことになる。この飛鳥了という人物の存在によって物語は真の意味で完結を迎えたと言える。
 この作品において悪魔は絶対的な悪ではない。悪魔は地球の先住民であり、人間は悪魔が活動を停止している間に現れた存在に過ぎない。かつての自分達の世界を取り戻すために悪魔は人間と戦っているのだ。これは同じダイナミッック・プロの『ゲッターロボ』(注3)のハ虫人類と同じである。この作者が描きたかったのは人間の存在を脅かす悪魔と戦う不動明、という勧善懲悪の図式ではない。むしろ人間の中にも悪魔がする、ということを描きたかったのだろう。戦いの中、人間の心に存在する悪魔に気がついた明は、人間は本当に守るべき存在なのかと葛藤する。一方、サタンは神の身でありながらも他の神々に虐げられた悪魔達を守るために戦ってきた存在であった。この対照は非常に興味深く、作品に深みを与えている。
 冒頭で述べたように、この作家は多くの作品を生み出してきた。そんな中でもこの作品は永井豪イズムに溢れている。美しいまでにグロテスクな神と悪魔の世界、デーモンとの戦いや理性を失った人間の残虐さの描写、了の感情、主人公の死を持って迎える結末…。必要とあらばヒロインの生首さえも出してしまう強烈に独特の世界と物語が絡まり合うこの作品こそが、本当の永井豪という作家を知る代表作と言えるのではないだろうか。(2005年4月26日)

(注1)兜甲児が祖父の残した巨大ロボット・マジンガーZに乗り込んでDr.ヘル率いる機械獣軍団と戦う物語。ガンダムと並びロボットアニメを語る上で忘れてはならない存在。
(注2)如月ハニーが正義の味方・キューティーハニーに変身して戦う物語。バトルヒロイン物の金字塔。アニメは何度もリメイクされ、主題歌も何人もの人が歌った作品。当時は変身シーンが話題になったらしい。
(注3)主人公・流竜馬たちがゲッターロボに乗り込み、地球の先住民族・ハ虫人類と戦う物語。『マジンガーZ』、『機動戦士ガンダム』と並ぶ三大ロボットアニメの一つ。

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