■第十一回■
逆境ナイン(島本和彦)

逆境とは−
 思うようにならない境遇や不幸な境遇のことをいう

【作品概説】
 主人公・不屈闘志(ふくつとうし)はある日、校長室に呼び出され、野球部廃部を言い渡される。野球部存続のためには、甲子園で優勝するしかない。次々と降りかかる逆境と戦いながら、不屈は甲子園優勝を目指して戦う。
【所感】
 数ある島本作品の中でまずはこれを紹介します。私が個人的に好きな作品(注1)は他にも色々とあるのですが、このほど映画化されましたので、これにしました。
 さてこの作品、粗筋だけを見ると普通のスポ根ものみたいですが、実際はかなり違います。この作品で一番のテーマは『逆境を乗り越えていく』というところです。主人公は結構、悲惨な目に遭いますが、その度にそれを乗り越え、成長していきます。この作者はドン底から這い上がってくるということを重要視しているようで、『炎の転校生』において、人生の一番の楽しみは『歯の食いしばりと!血のにじみだ!!』と褐色のおじさん(注2)も言っていることからもそれがうかがえます。
 全体的に荒唐無稽で、熱血で、いい意味でお馬鹿な雰囲気で、読むうちにグイグイと引き込まれていきます。特にサカキバラ・ゴウ(注3)が時々発する言葉(注4)は教訓めいたようで理不尽ですが、その迫力に妙に納得させられるものがあります。とにかく『男の熱さ』が語られたこの作品、一度は読んでおくべきでしょう。 (2005年6月20日)

(注1)実は一番好きなのは『炎の転校生』だったりします。
(注2)『炎の転校生』で時々主人公を導いてくれる謎のおじさん。サウナで褐色に焼けているため、こう呼ばれる。
(注3)不屈のいる野球部の監督。歴史の先生。ナゼかカタカナ表記です。
(注4)『それはそれ、これはこれ』とか、『誰だってたたけばホコリはでる』とか、どちらかといえばネガティブな言葉をポジティブに使っている。

マンパクトップに戻る  ホームに戻る