■第十六回■
アカテン教師梨本小鉄(春日井恵一)

俺は常勝無敗@恂{小鉄だぜ!!』

【作品概説】
 日々をギャンブルで暮らす梨本小鉄(なしもとこてつ)。そんな彼の元に、小春日和中学校代用教員の採用通知が届く。二日酔いでの着任挨拶やギャンブルを題材にした常識外れの授業で生徒達を驚かせるが、実力考査での成績争いや生徒会長選挙などを通して生徒達の信頼を集めていくのであった。
【所感】
 はっきり言って、ムチャクチャな教師である。授業で生徒にお金を賭けさせたり、学校を巻き込んで受験トトカルチョを行ったり…。そんな破天荒な小鉄が生徒や他の教師の信頼を集めるようになったのは、変に飾り立てたりせずに自分の心をストレートにさらけ出す体当たりの教育のお陰であろう。連載されたのは週刊少年ジャンプであるが、読むべき人は子供ではない(注1)ように思う。そのせいか、連載はそれほど長くは続かなかった。それでも私の周りでは結構、知っている人も多い。良作だということであろう。
 絵柄は多少、古臭い感じがするし、表現が大袈裟なところ(注2)もあるが、読んでいてかなりインパクトがある。何よりも大袈裟なところが読んでいて妙に面白い。それにカッコつけない小鉄が逆にカッコイイと思う。
 教師モノの場合、大抵は不良生徒がいて、それを更正させていく中で信頼を得る、というものが多いが、小鉄はそういった不良達のさらに上をいく存在である。そのためか、『生徒達と向き合って』というよりも『生徒達を守るために』対立する教師やヤクザなどと戦う、という構図が多い。そうして小鉄は生徒達の信頼を集めるようになり、また、最初は生徒達を『商売道具』ぐらいに考えていなかった小鉄自身もだんだんと生徒達を大事に思うようになってくる。手法としては独特のものであると思う。これが小鉄の個性と相まって、他に類を見ない作品になっている。
 その後、ジャンプ的展開(注3)に見舞われ、物語は幕を閉じてしまうが、連載誌を変えてでももっと続けて欲しかった作品である。(2005年8月28日)

(注1)ギャンブル用語がやたらと多いし、大人対大人の構図が多い。青年誌で連載していれば評価も違ったかもしれない。
(注2)特に生徒会長選挙の辺りはサイコー!
(注3)『戦場≠フ七人+1』のこと。日本一優れた教師を決めるトーナメントに小鉄が出場する。作者の考えか編集部の意向か知らないが、このシリーズは作品中で明らかに異質であったと思う。当時のジャンプでバトル物を中心としてこのような展開は多かったが、教師が主人公の漫画でそれはないだろう、と思う。

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