■第十九回■
望郷戦士(工藤かずや・北崎拓)

『オレたちは東京へ帰るんだ!!』

【作品概説】
  夏休みに、武田信玄の隠し財宝を探しに長野県へと出かけた倉田迅(くらたじん)たち中学生四人と迅の弟、きよし。彼らは、宝探しの途中、地震で洞窟に閉じ込められる。三日後、ようやく外に出ると、そこは世界大戦によって荒廃した十三年後の世界だった。生きるため、そして両親や友人と再開するために、その手に武器を持ち故郷・東京を目指すのであった。

【所感】
  かなり古い漫画です。掲載誌は少年サンデーですが、この作者(注1)がこんな漫画を描いていたなんて知りませんでした。しかしこの漫画は良作にあげても良いでしょう。
 この作品は割と王道の展開です。生きるために戦うことを決意した少年たち。仲間たちとすれ違ったりもするが、過酷な環境で力を合わせてさまざまな危機を乗り越えて成長していく。バトルシーンもなかなか迫力があるし、武器についての説明なんかもあって、そういうのが好きな人にはたまらないでしょう。そして何と言ってもやはりラストが素晴らしい。迅たちは何とか東京にたどり着いたが、そこは巨大なクレーターとなっていた。それを見て愕然とするが、ラン(注2)の『ならつくればいい』という言葉を聞き、自分たちの手でもう一度、東京を作ることを決意する。未来に向かい希望に満ちたこのラストは良い意味で少年誌的であり、非常に好感が持てます。ちょっと前にそれなりに話題になっていた、似た設定の漫画(注3)はラストが中途半端な印象がありましたが、こちらは非常によいラストだったと思います。
 そのほかにも、数多くの個性的な敵も見逃せないポイントです。愛のために生き、愛のために死んだサブ。武器について講釈を述べながら攻撃してくる元大学教授。そして十三年前の同級生・近藤。特に東京を守る近藤と迅の戦いは注目です。それほど有名ではないようですが、埋もれさせてしまうには惜しい作品だと思います。(2005年10月8日)

(注1)北崎拓の漫画で私が一番最初に読んだのは『たとえばこんなラブソング』。それ以来、私はこの作者はこっち方面の作品ばかり描く人だと思っていました。
(注2)この作品のメインヒロイン。洞窟に入る前に迅たちが出会った時には、まだほんの小さな子だったが、十三年後の世界では迅たちを引っ張っていく存在となっている。
(注3)『ド○ゴン・ヘッ○』のこと。これも『洞窟を出ると、世界が崩壊していた。家族や友人に会うために東京を目指す』という内容の漫画。

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