■第二十回■
編集王(土田世紀)

『よしんば編集ってやつが、お前の言う通り不毛の地だとしても……
  ここで真っ白に燃え尽きる!』

【作品概説】
 幼い頃、「あしたのジョー」(注1)に憧れてボクサーになった桃井環八(ももいかんぱち)。しかしチャンピオンになることもなく、網膜剥離によりジョーになるという夢を失う。それを聞いた幼馴染のヒロ兄ィに誘われ、漫画の編集部でバイトをすることとなる。新たなリングを見つけたカンパチは様々な矛盾と闘いながら編集王を目指す。

【所感】
 漫画好きなら必ず読むべき漫画です。TVドラマ化されたこともありますが、全然別物らしいのでドラマを見たという人はそれとは切り離して見たほうが良いかもしれません。
 さてこの作品、漫画業界のことについて色々と(注2)描かれています。どのエピソードもちょっと大袈裟な部分はありますが、それでも十分にリアリティがあり、深く考えさせられるものがあります。それが迫力のある絵や個性的な登場人物(注3)、そして所々に織り込まれたギャグによって支えられています。自分たちが普段、何気なく読んでいる漫画に対する意識がきっと変わるでしょう。
 この物語はどちらかというと、立場的には漫画家サイドよりも編集者サイド、それも会社員としての編集者サイドに立って描かれています。それゆえ大企業としての、会社人としての論理というものも決して軽くは扱われていません。そのため、そこで描かれている問題は必ずしも漫画業界に限った話ではなく、様々な業界にも通じる問題となっています。そういう意味では、漫画好きだけでなく、会社員として働いている人にもぜひ読んで欲しい作品です。(2005年10月21日)

(注1)もちろん誰でも知っている、ちばてつや・高森朝雄によるボクサー漫画。あえて『ボクシング漫画』とは言わない。主人公・矢吹ジョーが真っ白な灰になるというラストはあまりにも有名。
(注2)企画モノで図らずも売れてしまった新人漫画家の話、名前だけの大家になってしまった人気漫画家の話、コミケ(作中では『マンケ』)の話、印刷所と出版社の関係、漫画の黎明期、ライバル会社との戦いなどどれも素晴らしい。特にマンボ好塚の話は必見です。
(注3)どうみてもどこかで見たことがある人が多いのも特徴。ニュースキャスターの鏡竜太郎なんて、みんな分かるのかな?

マンパクトップに戻る  ホームに戻る