■第二十三回■
健太やります!(満田拓也)

『これでぼくらが勝とうなんて、ちゃんちゃらおかしいですよ!!
  ぼくらももっと…もっと苦労しなきゃ!!』

【作品概説】
 体は小さいが、バレーボールが大好きな井口健太(いぐちけんた)。彼は中学時代、バレーボールの名門中学にいたものの、ずっと補欠だった。彼が入学した坂見台学園高校は弱小であったが、インターハイ優勝を目指して仲間たちと努力を重ねていくのであった。

【所感】
 テレビを見ていたらグラチャン(注1)がやっていたので、今回はこの作品にしました。バレーボールを扱った作品というのは少ないです。『アタックbP』という名作はあるが、少年誌ではほとんど見たことがありません。そういう意味でもぜひ読んで欲しいと思います。この作品が描かれた頃はバレーボールのルールも今とは違います。サイドアウト制(注2)ですしリベロ(注3)もいません。しかしそんなルールの違いなどは関係なく、今、読んでも十分に面白く読む価値のある作品です。
 主人公・健太は背が低い。バレーボールにおいてこれほど不利なことはないでしょう。それでも彼は身長には関係ないサーブとレシーブに磨きをかけて闘います。特に彼のレシーブ力は凄まじく、相手エースの渾身のスパイクを悉く止めてしまうほどです。それが非常に小気味良い。しかし前述したとおり、当時はリベロというポジションはありませんでした。そんな中でレシーブを武器に闘っていくということは、レギュラーの座を追われかねないという危険性もあり、試合以外においても非常に大変なことです。また、キャプテンになってからもチーム内でのゴタゴタもあったりと、彼の苦労は耐えません。それでもひたすら努力する健太は好感が持てます。
 この作品は井口健太という選手の姿を追うだけではなく、『高校生の部活動』というものに関してのエッセンスが色々と詰まっています。チームメイトとの関わりやライバルチームとのやりとり、推薦で集められた訳ではない普通の高校生が部活動に全てをかけるということの意味…。スポーツ漫画としてかなり王道であると思います。バレーボールの部分においても戦術等が初心者にも分かりやすく描かれていて、読んでいくうちにバレーボールに興味を持つようになることでしょう。特にライバルの誠陵がどう強いのか(注4)が素人でも良く分かるようになっています。
 ラストにおいて、健太はいきなり身長が伸びてます。これには賛否両論あったようですが、いずれにしても彼はきっと、スパイクやブロックもその後の努力で磨き上げていくことでしょう。(2005年12月4日)

(注1)ワールドグランドチャンピオンカップ。4年に1度、開催されるバレーボール世界一決定戦。
(注2)サーブ権を持つチームがポイントを決めた時のみ、得点が入るルール。現在はサーブ権の有無に関係なくポイントを決めたら得点が入るラリーポイント制。ちなみにサイドアウト制の場合、1セットは15点マッチ。
(注3)守備専門のポジションで通常の選手交代とは別に自由にコートに入ることができる。その代わり、サーブが打てない、前衛ではスパイク、ブロック、オーバーハンドトス、そしてバックアタックが禁止となっている。サッカーのゴールキーパー同様、一人だけ色違いのユニフォームを着ている
(注4)まずサーブレシーブが100%セッターに返る。セッター以外の五人は全員、バックアタックが打てる。その上、セッター自身もツーアタックが打てる。もちろん、全員がクイックを使いこなす。どこからでも攻撃できる、正に理想のバレーボールである。ちょっとやり過ぎな気がする。

マンパクトップに戻る  ホームに戻る