■第二十四回■
わたるがぴゅん!(なかいま強)

『野球をよォ〜
  野球をやろうぜよ野球を〜!!』

【作品概説】
 東和台中学に沖縄(注1)から転向してきた主人公・与那覇わたる(よなはわたる)。マネージャーに一目惚れした彼は野球部に入部する。また、沖縄からわたるを追ってきた宮城もまた、野球部に入部することとなる。二人の沖縄野生児を中心に東和台野球部は個性的なライバル達と熱戦を繰りひろげていく!

【所感】
 これは普通の野球漫画じゃありません。こんなに大笑いできる野球漫画はないでしょう。登場人物達は試合中だというのに、奇想天外な行動をしてくれます。特に沖縄番長・宮城の行動は予測不可能。そのせいで試合は中断が多くなってしまい、進行は滞りがちです。どっちが何点差でリードしているのかといった基本的な状況ですら忘れてしまいかねないほどに(注2)。何しろ一つの大会を終わらせるのに単行本58冊(注3)もかかっているのですから。約半年の出来事にこんなにかけているのは他に見たことがありません。
 宮城だけでなくライバル達も超個性的。もはや個性的などという月並みな言葉では表現しきれないくらいに変なヤツラ揃いです。特に地区予選決勝の宮城対上原のは必見。選手だけでなく、監督や審判(注4)、観客までもが面白い。もう登場人物全員が野球自体をそれほど重要視していないかのようです。冒頭で掲げた言葉は地区予選決勝の対戦相手投手・土屋のものですが、そう叫んでしまう彼の気持ちもよく分かります。
 あまりにもギャグが激しいので見過ごされがちですが、野球の部分も実はなかなかにしっかりと描かれています。わたるは次々と魔球(注5)のような新球を身に付けていきますし、対戦相手もそれぞれに野球的に特徴のあるチームで、ライバルの中には魔球を投げるピッチャーもいます。何より各試合のクライマックスはちゃんと野球で盛り上げています。野球とギャグが実に絶妙なバランスで組み立てられているのです。この独特の世界をぜひ味わって欲しいと思います。(2005年12月17日)

(注1)作者が沖縄出身ということもあって、沖縄の方言がたくさん出てきます。
(注2)わたるが『こいつらをみてると1点とられたことなんてどうでもよくなっちゃうでしょ?』と言っていたが、正にそんな感じです。
(注3)連載開始が1984年で終了が2004年。長すぎる…。
(注4)審判もなかなかに変な人が多いが、それだけでなく空気が良く読めているようで、明らかに走塁妨害や守備妨害でも取らない時もあるし、取る時もある。
(注5)二段ホップするハブボールやシーサーボールと名付けられたナックルボール、急降下山なりボールであるスコールボールやスピードの変わるアベック台風ボールなどを投げます。

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