■第三十回■
魔法陣グルグル(衛藤ヒロユキ)

都からはるか西 「ジムナ村」という小さな村に
 奇妙な幻獣の伝説があった
 村人たちはそれを「グルグル」と呼び
 起こしてはならない神として恐れ 丁重に祀っていた

【作品概説】
 ある日、ジミナ村に勇者を募集する看板が立てられた。主人公・ニケは勇者マニアである父親・バトによって無理矢理勇者(注1)として旅立たされてしまう。そして村のオババの家に旅立ちの挨拶によったニケは、古代の魔術『グルグル』を使う女の子・ククリを紹介され、一緒に冒険に行くことになる。敵も味方もおかしなメンバーに囲まれてハチャメチャな旅を続ける二人。果たして魔王を倒すことができるのか?

【所感】
  簡単に言うと、ギャグファンタジー漫画。連載当時、流行っていたコンピューターゲームのRPG(注2)っぽい世界で物語は繰り広げられる。いかにも王道のRPGでありそうな展開をパロディにしている。魔物との闘いでは力の抜けるような戦闘シーンが多い。時々、シリアスな展開もあったりするが、そういった場合でも必ずと言っていいほど最後にはギャグで締める。テクノミュージックに詳しい人には分かるネタが随所に見られるらしい(私はテクノは全然知らないもので…)。
 登場人物もやっぱり普通じゃない人が多い。主人公のはずのニケからして、『魔王を倒して平和な世の中にするぞ』といったタイプではなく、やる気があるんだかないんだか分からない態度で、奇行も目立つ。キタキタおやじは踊ってばかりだし、シリアスな展開になると『クサイ』と言いながらギップルが飛んで来る。その他にもカッコイイ(?)4人組のジイサンやオマヌケな敵達など、世界の存亡を賭けた冒険に関わる人達とはとても思えない。そんな中ではヒロイン・ククリは普通の女の子と言っても良い。ちなみ彼女は第1回漫画最萌トーナメント(注3)で優勝もしている。
 ハチャメチャさばかりが目立つ作品だが、基本になる世界の設定は結構、面白い。『グルグル』(注4)や『キラキラ』(注5)の設定なんかもそうだし、『闇』の子であるククリと『光』の子であるニケが力を合わせるというのも良く出来ていると思う。連載中に大きく絵柄が変わったのも特徴で、1巻と最終巻ではまるで別人が描いたよう、とまで言われている。
 この作品は2度にわたってTVアニメ化されているが、連載誌がそれほどメジャーじゃなかったために案外、知られていない。たまにはこういったリラックスして楽しめる作品も良いのではないでしょうか。(2006年3月19日)

(注1)実はニケの職業は『盗賊』。この世界では『勇者』は職業ではなく称号のようなものらしい。
(注2)ロールプレイングゲーム。元々はテーブルトークを源流とする、『役割を演じる』ゲーム。
(注3)詳しくはググってください。ククリは綾波レイや音無響子、桂木弥子といった強豪を直接対決で破っています。
(注4)ククリが使う闇魔法。地面に魔法陣を描くことにより効果が発動する魔法。ミグミグ族だけが使える。ミグミグ族は歌と踊りが好きだったが、それが魔法陣を描く手助けになる、とか、上達すると地面に魔法陣を描かなくても効果を発することができるといった設定も良かった。
(注5)ニケが使う最高の光魔法。自然界の力を取り出して剣に変える。4大精霊全ての力を得ると光の剣を呼び出すことができる。

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