■第三十一回■
道士郎でござる(西森博之)

『拙者、戦うしか能がないからの』

【作品概説】
 ネバダ州から12年振りに日本へと帰ってきた少年・桐柳道士郎(きりゅうどうしろう)。しかしアメリカで12年も過ごしたはずなのに彼は立派な武士になっていた。時代錯誤な格好と道徳心、そしてその行動に周りは振り回され、影響され、巻き込まれていく。

【所感】
  この作者の漫画は昔からけっこう面白くて好きだったが、この作品は特にお気に入りです。内容としてはお得意のは学園コメディ。主人公の道士郎は照れも臆面もなく『武士』として生きているという人物。この作品以前に連載していた『天使な小生意気』の小林君(注1)を激しくした感じの人です。
 道士郎はメチャクチャ強い。しかしどこかズレている。何か言うたび、するたびにみんなからツッコミ受けまくりです。そんな道士郎の言動・行動はかなり笑えるが、彼を取り囲む周りの人達もなかなか良いキャラクターが集まっています。特にもう一人の主人公とも言える小坂健助(こさかけんすけ)は普通の平凡な高校生であったはずなのに、道士郎に関わっていくうちにドンドンと変わっていきます。そして健助もまた本人の自覚のないうちに道士郎と共に、関わった人達を変えていってしまいます。最初は悪人として登場した不良たちですら、最後は健助を『殿』とする憎めないキャラになってしまうのです。この人の作品はもさりげなく人として大切なことが混ぜて合ったりします。それがギャグの中に入ってしまっているので、押し付けがましいものではなくなっているのも特徴です。
 健助は普通の高校生のつもりのようですが、なかなか機転がきくうえに物事を冷静に見て判断できる人物です。腕力はなくとも、こういうところがある意味、『殿』と呼ばれるに相応しい人間と言えるかもしれません。
 ラストはあんまり最終回っぽくない(注2)ような感じもしますが、いつでも連載を再開できるような終らせ方になっています。いつか是非とも、再開して欲しいものです。 (2006年4月1日)

(注1)主人公・恵の同級生で『武士』になるように育てられた。道士郎との最大の違いは、それを恥ずかしそうにしているというところ。
(注2)途中までは『道士郎がアメリカに行ってしまう』、という内容でいかにも最終回という感じでしたが、最後の最後ですぐに日本に戻ってきてしまっているのです。

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