■第三十三回■
バケツでごはん(玖保キリコ)

中途採用のどこが悪いんや!?

【作品概説】
 上野原動物園。ここは実は秘密の街で人間たちと同様の生活を送っている動物たちが働いているのであった。その上野原動物園にペンギンのギンペーが中途採用で入ってくる。芸に厳しいギンペーは最初、同僚たちとうまくいかないが、次第に心を通わせるようになる。人間臭い動物たちが繰り広げるほのぼのとした心温まる物語。

【所感】
  読んでいてなんだか気分が良くなる作品です。動物園とは言え、彼らにとっては『職場』。人間社会と同じように、職務上で同僚とのいさかいもあります。また、家に帰ってからも親子と関わりや近所との付き合いもあります。そんな彼らの人間臭さが非常に好感が持てます。ちなみに珍しく「書籍扱い」で販売された漫画です。
 上野原動物園にとって、ギンペーというのは重要な存在だと思います。当初は仲間とのイザコザがあったりしますが、それもギンペーの仕事熱心さからくるもの。ロンさんの事件をはじめ、色々な出来事を経てギンペーは同僚たちに信頼されるようになっていきます(注1)。この動物園では、何かトラブルなどが起こった時、全員が集まって話し合いますが、それもギンペーが来たからこそ、そういうことができる雰囲気ができたのではないでしょうか。ギンペーがいなければきっと、みんなバラバラだったような気がします。ちょっと気が短くお節介焼きですが、人情派で一生懸命な彼をみんな、認めているのだと思います。
 動物園の同僚だけでなく、ギンペーの両親や隣の奥さん、ズブロフスキーさん(注2)など誰もがハッキリとした個性を持っていて楽しませてくれます。こんな動物たちの生活をぜひ覗いてみてください。なお、各巻の下部にはパラパラマンガが付いていますので、そちらもお楽しみください。(2006年5月5日)

(注1)物語途中から。ペンギンたちはよくギンペーのところへ相談に来るようになります。
(注2)かつて上野原動物園で働いていた狼。家は使用人がいるほどのお金持ちで、ダボンという子を引き取る。狼が豚を引き取るというのがなかなか面白いと思う。

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