■第三十四回■
アストロ球団(遠崎史朗・中島徳博)

あらゆる風に 負けることなく
 堂どうと翻れ アストロ球団!!

【作品概説】
 第二次世界大戦中、フィリピンに出生していた沢村栄治と出会った少年・シュウロ。彼は沢村が夢見た大リーグのチームと闘うことができるチームを作るため、昭和29年9月9日午後9時9分に生まれた体にボールのアザを持つ9人の男を探していた。これは最強の野球チーム結成のために死闘を繰り広げたアストロ超人たちの物語である。

【所感】
  かなり昔の作品ですが、ある意味、『伝説』の作品でもあります。『一試合完全燃焼』の信念に基づく彼らの野球は凄まじく、試合中に死人が出る(注1)こともしばしば。登場する魔球や打法(注2)も常軌を逸したものばかり。ライバル達も奇人変人揃いで、本当に野球をやるメンツかと思ってしまうほど。そんなツッコミどころ満載の作品ですが、アストロ戦士たちの闘いっぷりはその画風もあって、理屈じゃなく魂を揺り動かされるような迫力があります。
 この作品でスゴイと思ったのは、巨人(注3)を悪役にしてしまっているところです。星飛雄馬や番場蛮は巨人に入ってスターとなりましたが、巨人と敵対してスターとなったのは彼らくらいかもしれません。しかも彼らの真の目標は、巨人軍などではなくアメリカ大リーグと闘えるチームを作ることだったのですからさらにスゴイ。当時でそんなことを考える人なんてほとんどいなかったでしょう。
 結局、彼らは9人揃ったものの、日本球界を追放されてしまいます。「日本プロ野球界が我々とおなじレベルの力量をたくわえるまで」彼らは世界を巡って試合をする旅にでますが、今の日本プロ野球界なら、彼らと戦うことはできるのでしょうか?今のプロ野球界へ挑戦する彼らを見てみたい気もします。
 読切作品で9人全員揃ったものも描かれています。(2006年5月17日)

(注1)打球をキャッチしたらそのまま吹き飛ばされ、バックボードにめり込んで感電死とか、腹を切ってサラシを巻いて打席に入ったりとか。
(注2)手の平をドリルで削って投げる魔球や手首の関節を外して投げる魔球、バットにあらかじめヒビを入れておいて打つと同時にバットが砕け打球と破片が飛んでいく打法などモノスゴイものが目白押し。
(注3)この時の巨人は、川上哲治監督の下、V9を目指していた時。ヒーローになりこそすれ、悪役には決してならないような状況です。

マンパクトップに戻る  ホームに戻る