■第三十七回■
機動戦士クロスボーン・ガンダム(富野由悠季・長谷川裕一)

宇宙世紀0133− 木星−
 この地球より遠くはなれた世界に
 人知れず着々と地球圏侵攻の準備を進める存在−
 木星帝国≠ェあった

【作品概説】
 交換留学生として地球圏から木星へ向かうことになったトビア・アロナクス。木星圏へと向かう旅のの途中、彼の乗る船が宇宙海賊に襲われる。その時、偶然にも木星帝国の存在を知る。そしてトビアは木星帝国の野望を阻止するため、宇宙海賊クロスボーン・バンガードに協力することになるのだった。

【所感】
  今回はちょっと毛色の変わった作品を紹介します。ガンダムファンの中には名前を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、この作品は『機動戦士ガンダムF91』(注1)の続編にあたります。ガンダムに興味のない人はスルーしてください。
 この作品はガンダム関係作品としても『F91』の続編としても、そして物語としてもなかなかの出来栄えです。
 ガンダムものとして見た場合、様々なコンセプトの兵器が登場し、ニュータイプ(注2)に関してもしっかりと描かれています。これまでガンダム世界において重要な場所でありながらちゃんと描かれてこなかった木星圏についてもしっかりと説明がされています。
 また、『F91』の続編として見た場合、キンケドゥとベラ(注3)は当然、物語において重要な人物であり、扱いも特別なものとなっていますが、それでも今回の主人公であるトビアの存在を阻害しないように描かれています(注4)。また、ザビーネ(注5)の扱いも納得のできるものとなっています。
 そして一つの物語として見た場合、何も知らなかったトビアという少年が戦争を通して様々な経験をし、成長していくという王道をしっかりと押さえています。特に最終決戦の場面は秀逸で、ドゥガチとのやり取りも主人公らしくキメています。
 ガンダム関連の漫画というのは世にたくさんありますが、この作品は是非とも全てのガンダムファンに読んでもらいたいものです。そしてできるなら、映像化して欲しい作品でもあります。(2006年6月26日)

(注1)1991年に劇場公開された作品。ガンダムシリーズの一つで地球連邦と宇宙海賊クロスボーン・バンガードの闘いを描いている。当初の予定では、これが新シリーズの1作目となり、続編が作られていくはずだった。
(注2)ガンダムファンにはいまさら説明するまでもないかもしれませんが、簡単に言えば宇宙に進出したことによって認識力などが向上した人のこと。超能力者みたいな描かれ方をしている場合もあります。
(注3)『F91』の主人公とヒロインであるシーブック・アノーとセシリー・フェアチャイルドの仮の名。ベラはクロスボーン・バンガード旗艦の艦長として、キンケドゥはそのエースパイロットとして登場する。
(注4)『Z』におけるクワトロ(シャア)、『SEED DESTINY』におけるアスランやキラは主人公の存在を危うくするほどに目立ち過ぎていた。
(注5)『F91』の終盤、クロスボーン・バンガードのやり方に疑問を持ちベラ達に強力するようになったが、必ずしも彼女達の考えに賛同している訳ではなかった。

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