■第三十八回■
うる星やつら(高橋留美子)

『本当にうちのことを忘れてもいいっちゃ!?』
 『忘れるもんかーっ!!』

【作品概説】
 地球の命運を賭けた鬼ごっこの地球代表となった諸星あたる(もろぼしあたる)。その鬼ごっこの最中、インベーダー側の代表選手であるラムはあたるが自分に求婚をしていると勘違いしてしまう。鬼ごっこはあたるの勝利に終わったが、そこからラムとあたるを中心とした奇想天外で波乱万丈な日常が始まるのであった。

【所感】
  あまりにも有名なのでみなさんご存知であろう作品。女流作家の中でもナンバーワンのヒットメーカー(注1)と言っても過言ではないこの作家は多数のヒット作を持っているが、この作品こそが『最も高橋留美子らしい作品』と言えるだろう。
 この作品で一番注目すべきはキャラクターの個性。誰も彼もがいい意味でアクが強いキャラクターとなっている。ここまで際立った個性を持つキャラクターが数多く登場する作品はなかなかない。まともな人間など一人もいないと言っても良いくらいである。キャラクターが立っているというのは、漫画、特にギャグ漫画においては基本とも言えることだが、それがしっかりとなされている点が非常に評価できる。
 ヒロインやその友達は宇宙人ばかりだし、幽霊や妖怪も登場する。このように登場する人物の立場などに制約はないが、それは彼らの周りで起こる事件も同様である。SF的な事件もオカルトチックな事件も起こるかと思えば、普通の高校生としての日常生活の話なんかもあったりする。こういった『なんでもアリ』の登場人物と世界観がこの作品を非常にバラエティ豊かなものにしている。それだけ色々なものが混ざってしまっていても、しっかりと一つの作品としてまとまりがあるのは、やはり中心になる人物たちがしっかりと描かれているせいだろう。
 そして忘れてはならないのは、最終回の見事さ(注2)である。鬼ごっこから始まったこの作品を鬼ごっこでシメるというのはなかなか良い。この作品は長きに渡るラムとあたるの鬼ごっこだったとも言えるからだ。第一話においてあたるはラムを追いかけていたが、それ以降はラムがあたるを追い回すことになる。そして最終回においてはまたあたるがラムを追いかけることになる。ただし最後の鬼ごっこは、あたるは『インベーダー側の代表選手』ではなく、『ラム』を追いかけているというのが重要である。
 そして、最後の最後までラムとあたるの関係を大きく崩さなかった点もまた良い。もちろん、最後の鬼ごっこにおいてお互いの気持ちを確かめたのではあるが、あたるがはっきりと口に出して『好きだ』とは言わなかったことにより、これからもこの二人はこれまでと同じようにケンカしながらもなんとかやっていくんだろうなぁ、と思わせる。この世界の人達はこのようにドタバタを繰り返しながら生活していくのが非常に似合っていると思うから、こんなラストこそが相応しいと思う。(2006年7月12日)

(注1)この『うる星やつら』以外にも、『らんま1/2』や『めぞん一刻』、『犬夜叉』など描く作品のほとんどがアニメ化されている。OVAを含めれば、アニメ化されていなものの方が少ないくらいではないかと思う。
(注2)この作品だけでなくどの作品も終盤から最終回にかけての作り方が非常に上手い。長い連載の最後に相応しい、感動的な仕上がりになっている。

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