■第三十九回■
オトナになる方法(山田南平)

加藤久美子さん(17)は とてもお行儀の良いお嬢さんで ご近所の評判もすこぶる良かった−
 そんな久美子さんはいま… 恋をしていた
 一色小学校4年2組 池山真吾(10) 久美子さんの恋のお相手…である

【作品概説】
 高校生・加藤久美子(かとうくみこ)は小学生・池山真吾(いけやましんご)に恋をしていた。年齢も立場も大きく違う二人がそれぞれの悩みを乗り越えながら成長し、オトナになっていく。

【所感】
  この作品は『久美子&真吾シリーズ』(注1)の最終シリーズです。表題は『オトナになる方法』としてありますが、同シリーズ全般について述べていきます。
 7歳差のカップルというのは世の中ではそんなに珍しくはないのかもしれませんが、小学生と高校生となると途端に珍しくなります。この設定だけでもかなり面白いと思います。もしこれが男女逆だったら全然違った印象を受けるのでしょうが…。
 大人のようで子供の久美子、大人びてはいるが、やっぱりまだ子供の真吾。そんな二人が互いのことを思いやりながら、たまにはケンカをしたりして少しずつ大人になっていく姿に好感が持てます。
 7歳差というのは世の中では受け入れられ難く(注2)、二人はそういった面でも色々と苦労をします。小学生としての考え、高校生としての考え、男としての気持ち、女としての気持ち…。そういった二人の理論と感情を作者は上手く描いていると思います。それは主人公二人だけではなく、彼らを取り巻く友人達も同様で、それぞれの立場でのそれぞれの想いがしっかりと描かれています。そうしてキャラクター達の内外面の個性をしっかりと確立させつつも、彼らは皆、同じようにオトナになる方法を探している時期だということも忘れてはいません。そのためキャラクター達に親しみを持てるようになっています。
 恋愛に年齢は関係ないとはよく言われることですが、同じように悩み事にもやっぱり年齢は関係ないのです。小学生には小学生としての、高校生には高校生としての悩みがあります。誰しもが多感な少年期に恋愛や友情を通して様々なことを学んでいきますが、久美子と真吾のように7歳差のカップルという特殊な立場であっても、それは変わりません。そうやって様々なものを乗り越えて大人になっていく二人を見ていると、年齢だけは大人と呼べるようになってしまった自分自身も、考えされられるものがあります。(2006年7月26日)

(注1)このシリーズは『130センチのダンディ』、『ドッジボールをしよう』、『未来予想図』、『STEP UP』、『パリで一緒に』、そして『オトナになる方法』から成り立っています。読む人はこの順番でどうぞ。
(注2)主人公二人だけでなく作者も苦労したようです。

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