■第四十回■
武装錬金(和月伸宏)

同じが如き境遇の下−
 絶望にしがみついた男と…
 希望を手放さなかった男…
 絶望≠ェ希望≠ノ敵うはずなどない−

【作品概説】
 ホムンクルスと呼ばれる怪物によって殺された武藤カズキ(むとうかずき)は、錬金の戦士・津村斗貴子(つむらときこ)によって核鉄を与えられ、命を救われる。しかしそれは、ホムンクルスと闘うための力でもあった。

【所感】
 この作品は週刊少年ジャンプに連載されていましたが、それだけでは完結しません。最終回後の話を『ファイナル(注1)』、『ピリオド(注2)』、『アフター(注3)』と読切で描いています。これによってこの作品は本当に完結します。
 主人公のカズキは熱血漢で自分が正しいと思ったことを貫こうとする、主人公らしい主人公です。あまりにも真っ直ぐ過ぎて、却ってイヤミに感じる人も読者の中にはいるかもしれません。パピヨン(注4)がカズキのことを『偽善者』と言い、カズキがそれに答えるのは、作者がそういった読者に対して回答を出しているのではないでしょうか。ともかくカズキは何と言われようとも自分の信念を曲げません。だからこそヴィクターまでも救うことができたのでしょう。
 この作者は『ハッピーエンドこそが物語の基本』という考え方をしています。それは冒頭で挙げた言葉でもよく分かります。全てに決着をつける(=ハッピーエンドを迎える)ためには、カズキのこの真っ直ぐさが必要だったのではないかと思われます。
 また、この作品のバトルはなかなか良く出来ていると思います。武装錬金という一風変わった武器にすることによって、それぞれの武器に特徴を持たせアクセントを加えて、さらにはその使い手の性格までをも表現(注5)しています。バトルとバトルの間にはカズキ達の生活振りを入れ、さらにそこに細かいお遊び(注6)なども混ぜることによってバトルばかりの単調な展開にならないように工夫してあります。また、カズキ以外のキャラクター達も個性的(注7)で、読んでいて飽きさせません。
 最初から最後まで、非常にバランスの取れた良質な作品と言えるでしょう。(2006年8月5日)

(注1)本編では描かれることのなかったカズキとヴィクターの戦いを描いています。
(注2)全ての人が救われる、本当のラストです。
(注3)後日談。斗貴子さんの顔の傷の秘密が明らかに!?
(注4)カズキの最大のライバル。本名、蝶野攻爵(ちょうのこうしゃく)。元は同じ学校に通う生徒だったが、ホムンクルス化し『パピヨン』と名乗る。敵であるが憎めない、かなりイイキャラクター。
(注5)カズキの突撃槍なんかはその最たるもの。モーターギアなんかもかなり面白い武器だと思う。
(注6)ハンバーガーショップでのやりとりとか、『ブラボー!おお…ブラボー!!』という台詞とか、けっこう笑える。
(注7)パピヨンはもちろんのこと、顔に傷のあるヒロイン・斗貴子さんやとっても『ブラボー』な戦士長・防人などイカス面々が数多く登場します。

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