■第四十一回■
ROOKIES(森田まさのり)

夢にときめけ!明日にきらめけ!by川藤幸一

【作品概説】
 二子玉川学園高校に赴任した新人教師・川藤幸一(かわとうこういち)は、試合中の不祥事により活動停止となっている不良の巣窟・野球部の顧問を自ら買って出る。そして自分のやりたいことを見つけられない生徒たちに、夢を持つことの素晴らしさを教え、野球部を建て直し、共に甲子園を目指す。

【所感】
 かつてのテレビドラマ、『スクールウォーズ』(注1)を思い出させるような作品です。熱血教師を最初は鬱陶しく思っていた生徒達が次第に心を開いていく様子は感動的です。
 川藤は国語教師だから口が上手いの分かりますが、彼は口先だけではなくその行動によって生徒達の信頼を得ていきます。自分自身の身を顧みない、本当に生徒のためだけに奔走する彼の姿には好感が持てます。そんな彼の言葉だからこそ、本当に心に響いてくるのではないでしょうか。
 野球漫画の場合には登場人物が多くなるため、一人ひとりの掘り下げが甘くなりがちですが、この作品はその辺りを上手く処理しています(注2)。それぞれの人間としての個性、野球選手としての個性をしっかりと描ききっています。それはニコガクの生徒だけではなく、対戦相手も同様です。
 原哲夫系のリアル志向の絵とこの作者持ち前の随所で光るギャグセンスなどでもこの作品のレベルの高さをうかがわせます。
 この作品を書いている頃からしばしば作者は体調不良に陥った(注3)ようで、終盤は急ぎ足でまとめた印象があり、それが唯一の残念な点でしょうか。また、読んでいて気付いた人も多いでしょうが、登場人物は野球選手から名前を取っています(注4)。ニコガク関係者はタイガース、他校はジャイアンツとなっています。
 全てに渡ってハイレベルなこの作品、感動すること請け合いの超オススメ作です。(2006年8月20日)

(注1)『落ちこぼれ軍団の奇跡』という小説を原作とするドラマ。京都市立伏見工業高校ラグビー部を舞台に、生徒の健全育成に取り組む教師と生徒達との交流を描く。ちなみに、原作小説は基本的にノンフィクションであるが、生徒たちの素行に問題があったというのは小説でのお話で、実際にはそんなことはなかったとか。
(注2)前作『ろくでなしBLUES』においても、あれだけ登場人物が多いにもかかわらず、それぞれの個性や背景をしっかりと描いていました。
(注3)この作品の後に連載された『べしゃり暮らし』も休載が多く(ただし、この作品の場合には純粋に取材のための休載も多かった)、8回にも及んだ。
(注4)わざと名前を間違える時ですら、『ラインバック先生』と言うほどの徹底振り。ちなみに女性キャラの下の名前は女子アナウンサーから取られている。

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