■第四十八回■
ノーマーク爆牌党(片山まさゆき)

『麻雀に流れなんてないよ』

【作品概説】
 ある日突然、麻雀界に現れた謎の男・爆岡弾十郎(ばくおかだんじゅうろう)、通称・爆弾。彼は、自ら爆牌(注1)と名付けた必殺の打法をもってそれまで誰もなし得なかった麻雀界の三大タイトルをことごとく獲得する。
 そんな爆弾に、個性溢れる雀士達がそれぞれの打法をもって彼に挑む!

【所感】
 この作者は元々は『スーパーヅガン』、『ぎゅわんぶらあ自己中心派』といったギャグ系の麻雀漫画を描いていたが、この作品はそれらとは大きく内容が異なっている。自身も麻雀に関してはかなりの凄腕である(注2)せいもあって、この作品の闘牌シーンのレベルの高さには定評がある。
 闘牌シーンの描写もさることながら、登場人物の作り方も優れている。爆弾はもちろんだが、鉄壁、茶柱、八崎などそれぞれが個性を持った打ち手で、自分の打ち方に極限まで拘っている。麻雀上級者というのはある程度、打ち方に似た部分が出てくるのが当たり前だが、この作品ではそれを踏まえつつもそれぞれの個性を出している。これは本当に麻雀に詳しくなくてはできないことだろう。麻雀のルールや戦術をちょっと知っているだけの漫画家がそれっぽく描くだけの作品とは違い、本当に麻雀を扱った漫画を読んでいると実感できる作品である。
 そしてこの作品の一番の見所は、麻雀における流れの存在とそれに対するスタンスである。突き詰めていけば麻雀は確率と相手の打ち筋を見極めるゲームである(注3)。流れというのはあるのかないのかハッキリしないものであるとも言える。そんなゲームにおいて、流れについて考察しているのは非常に興味深い(注4)。流れを否定し全てを読み切ろうとする爆弾と、流れの存在を確信し、それを活かそうとする鉄壁の闘いは興奮を覚えるほどである。
 率直に言って絵は上手くないが、それを補って余りあるほど、麻雀というゲームについて深く考えさせられる傑作であると思う。(2006年12月4日)

(注1)相手の手の内を完全に読み切り、余剰牌を引き出させてアガる戦法。
(注2)第1回麻雀最強戦において、並み居るプロを押しのけて優勝したほどの実力者。
(注3)あくまでも私の見解であるが、完全に間違いではないと思う。
(注4)特に鉄壁のまらだ模様の理論は納得させられる面がある。

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