■第五十回■
サイボーグ009(石ノ森章太郎)

一九四五年−
 第二次世界大戦は 広島 長崎への原爆投下によって
 幕を閉じた
 だが それは 原子力時代から 第三次世界大戦への
 危険をはらんだ時代の幕あけでもあった

【作品概説】
 196]年。世界の主要な国々から若者を集めている組織があった。日本でもまた、少年鑑別所を脱走した少年・島村ジョー(しまむらじょー)が謎の男たちに捕らえらた。彼らこそが世界の陰に潜む死の商人・黒い幽霊団(ブラックゴースト)であった。
 ジョーを含め世界中より集められた9人の男女はサイボーグ兵士の試作品として改造人間にされてしまう。しかし黒い幽霊団の企みを知ったギルモア博士と共に、黒い幽霊団を脱走する。そして彼らは黒い幽霊団の野望を打ち砕き、平和のために戦うのであった。

【所感】
 あまりにも偉大な作品なので取り扱うのにも躊躇いましたが、マンパク50回記念ということでこの作品にしました。
 この作品は長きに渡り様々な雑誌(注1)に連載されてきた、正にライフワークと言っても過言ではない作品です。幾度もTVアニメ化、劇場版化された作品でもあります。平成元年に刊行された愛蔵版では完結編(注2)の執筆を宣言していましたが、結局、それが叶うことはなく作者は他界されてしまいました。
 この作品はまず設定が優れています。9人のサイボーグ戦士たちは国籍・人種・能力・(元々の)職業など非常に多岐に渡って特徴付けられていて、それが各々の性格と相まって一人ひとりのキャラクターがしっかりと確立されています。そのため、本作品の特徴でもある様々なエピソードに対応できるようになっています。また、敵も特定の個人というよりも人間の総体としての欲望や悪意を象徴するかのような黒い幽霊団という武器商人組織としている点も秀逸。そうした設定に当時の社会情勢などを上手く織り込んだストーリーを作り上げることにより、作品の根底にある『反戦』と『平和』というテーマが明確となっています。
 本作品は黒い幽霊団との闘いが中心ではありますが、それ以外にも短中長編様々な話があり、その内容もSF、オカルト、ヒューマンドラマ、社会問題、神話・伝説など幅広い分野に渡っており、作者の豊富な知識とそれを活かす発想力の高さが伺えます。画力も非常にハイレベルで、人物は見やすく、背景はしっかりと描き込まれいる上にハイセンスなコマ割と効果的な構図がさらにこの作品の質を高めています。
 漫画という分野において間違いなく最高峰であるこの作品の魅力を言葉で語り尽くすことはできません。是非とも手にとって読んでください。(2007年1月4日)

(注1)「週刊少年キング」、「週刊少年マガジン」、「冒険王」、「COM」、「週刊少女コミック」、「月刊少年ジャンプ」、「プレイコミック」、「月刊マンガ少年」、「週刊少年サンデー」、「少年ビッグコミック」、「SFアニメディア」と2ケタにのぼる。
(注2)『Conclusion God's War』という完結編の構想があったらしい。それを基に、現在、息子である小野寺丈が小説として執筆している。

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