コラム(二)

2005年・総選挙を振り返る

2005年9月11日(日)、衆議院議員選挙が行われた。それから約一週間、各党とも色々と動き出している。今更になってしまうが、今回の選挙について思ったこと、特に自民党圧勝の原因について考察してみたいと思う。

@『郵政選挙』
 今回の衆議院の解散の原因は、郵政民営化法案が参議院で否決されたことである。否決されたのは参議院でなのに解散させられる衆議院の議員はたまったものではないが、首相の権限として与えられているのであるからどうしようもない。とにかく法案が通らずに解散となった。そう、否決されたのは『法案』が、である。法案に反対したからと言って、必ずしもその議員が『郵政民営化』に反対しているとは限らない。もちろん、郵政族の議員は民営化そのものに反対かもしれないが、自民党内の造反議員、野党各党で反対したのは法案の内容に問題があったからで、基本的には郵政民営化には賛成している人・政党がほとんどである。彼らが望んだのは、民営化をやめることではなく、法案の内容の精査であった。それでも小泉首相は、自分の出した法案が通らないと国会を解散してしまった。
 さて、実際に選挙活動が始まった時、小泉首相は「『郵政民営化』に賛成か反対か」と国民に問いかけをした。マスコミもそれを大々的に取り上げるものだから、ニュースをたまにしかみない人たちには、『法案』に反対した人たちは『郵政民営化』に反対する頭のカタイ議員、と映ったのではないだろうか。それも小泉首相の巧さ(狡さ)と言ってしまえばそうなのかもしれないが、小泉首相は『郵政民営化』という言葉はそれこそ聞いていてイヤになるくらい叫んでいたのに、肝心の法案の中身はほとんど示さなかった。どのように民営化するのか、民営化すると何が変わるのか…。そういったことがほとんど見えてこなかった。おそらく、今回、自民党に入れた人で法案の内容を吟味して賛成したという人はほとんどいないのではないだろうか。野党、特に民主党はこれに触れて戦うべきであったと思う。「自民党の出した法案では問題があるから、反対した。民主党ならこういう風に民営化する」というのを、選挙活動中にもっと宣伝すべきだったのだ。民主党は衆議院で法案の決を取った後にはそのようなことを言っていたが、選挙活動期間になると、あまりこのことに触れなくなった。某議員に民主党が考える民営化の方法について欠点を指摘されたせいもあるのかもしれないが、それでも「自民党の法案には問題がある」、ということはもっと声高に言うべきだったと思う。代わりに民主党は年金問題を中心に取り上げた。確かに、民主党の主張する通り、郵政民営化よりも重要で早急に対処すべき問題であるが、国民の目は(主にマスコミによって)『郵政民営化』の方に向けられていた。であるならばやはり、それを中心とした戦いに持ち込むべきだったと思う。
A公明党との選挙協力
 現在は自民党と公明党の連立政権である。今回の選挙は、その協力体制が如実に現れていたと思う。何しろ、小選挙区で自民党の立候補者がいるところには公明党は候補者を立てないのだから。そうして、公明党員は自民党の立候補者に票を入れる。誰でも知っていることだが、公明党員というのは必ず選挙に行く。しかもその勢力は小さくない。もうこの時点で民主党は自民党に勝てないような気がしてしまう。比例区の結果を見てみれば分かるが、実際の自民党・民主党の支持者の数は、現在の議席数ほどの開きはない。いかに公明党の力が大きかったかが分かる。私の記憶が確かならば、衆議院の選挙制度が変わったのは10年ほど前だと思ったが、以前のように中選挙区制であったならば、自民党と民主党の議席の数はもっと近かったのではないかと思う。

 探せば他にもいろいろと原因はあるだろうが、私は主に上記の2点が今回の選挙結果に結びついたのではないかと思う。
 衆議院で大量の議席を獲得した与党は、郵政民営化法案を通すだろう。選挙結果という民意が賛成を示した以上、今度は参議院も従わざるを得ない。万が一、また参議院で否決されて衆議院に差し戻しになったとしても、あれだけの議席を確保しているのであるから、通せてしまう。そしてその法案の内容を詳しく知る国民は、ほとんどいない。仮に法案採択後に何か問題が起こったとしても、小泉首相は来年には任期がきて辞めてしまう。続投する気はないらしい。実に良いタイミングである。
 また、今回の選挙において自民党は公明党に大きな借りができた。これをどう返していくのか。どうでもいい法案を一つ二つ通して、で済めばいいが、そうもいかないのではないだろうか。
 自民党のあまりに多い議席数に不安を感じる、という人も多い。だが、民主主義の法則に則って物事が行われた以上、これは『国民の総意』なのである。今回に限った事ではないが、これから何かあった時、決して政治家だけのせいにしてはならない。我々国民一人ひとりの責任なのである。

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