コラム(四)

『国』産ヒーローを作って欲しい!


=私とヒーロー番組=
 私が子供の頃、ヒーロー番組というものを良く見た。ウルトラマンや戦隊モノ、メタルヒーロー…。もっとも、リアルタイムで見られる年齢ではなかったので、そのほとんどは再放送だったが。早朝の再放送が多かったため、眠い目をこすりながら熱心に見たものだった。残念ながら私が住んでいた地域では再放送がなかったため、仮面ライダーシリーズはほとんど見たとがない。
 それはともかくとして、私はこのヒーロー番組といものが非常に好きだった。何と言っても格好良かった。それは見た目の問題だけではない。生き様が格好良かったのだ。世のため人のため正義のため、時には救うべき人々から誤解を受けながらも見返りも求めずに悪と闘うその姿は人として理想だった。大袈裟な言い方をすれば、大事なことはみんなヒーローから教わったように思う。

=現代のヒーロー=
 さてさて、現在のヒーローモノを見てみるとだいぶ様子が違うようだ。イケメン主人公が活躍するその世界は勧善懲悪ではなく、話は複雑化してしまっている。主人公が必ずしも絶対正義とは言えないものが主流となっている。『大人が見ても楽しめる』ということをウリにしているのだろう。しかし、ヒーローは子供にとって分かり易い理想的な人間でなくてはならない。一応、断っておくと、私は現在のヒーロー番組を否定しているわけではない。見ていて面白いと思うし、考えさせられることも多々ある。でもやっぱりそれは『大人』だからそう感じるのだと思うし、また、思考の根底にかつてのヒーロー番組の影響があるからだと思う。
 もしかしたら、私が幼い頃に見たようなヒーローというものを、私よりも下の世代の人たちは見たことがないのではないだろうか。それゆえ、人として正しい道を学ぶことなく大きくなってしまったのではあるまいか。もちろん、成長していけば世の中は勧善懲悪で動いている訳ではないし、正直者がバカを見る現実があることを知るようになるだろう。だからこそ逆にそういったモノを知る前に、心の奥底に刷り込むように正義を掲げるヒーローが必要なのでないかと思う。最近、若者による凶悪事件が増えているが、それはこの『真のヒーロー』不在の世代だったからだというのは極論であろうか。いや、ヒーロー達が少年に与える影響は少なくないはずだ。私自身、自分は聖人君子と胸を張って言える人間ではないが、それでも人として大切なことは何かをある程度は理解しているつもりだ。それはやはり幼い頃にヒーロー達から教わったことが基準となっている。であるならば、現代において再び本当のヒーローが必要ではないかと思う。しかしそれはターゲットとして大人を意識してしまった今のヒーロー番組ではできないと思う。そこで…。

=『国』産ヒーロー=
 日本放送協会の出番である!売れる売れないよりも子供たちに正しき道を示す番組としてヒーロー番組を作るなら、ここが一番だ。基本的に視聴者の受信料で成り立っているNHKならば、スポンサーからのおかしな横槍もない。国がヒーローを作れば良いのだ。国として「こういう人間に育って欲しい」と考える通りのヒーローが活躍する番組を、純粋に子供向けに作って欲しい。ヒーローが身をもって示す道は、教室で道徳の教科書を読むよりもきっと大切な事を教えてくれるはずだ。また、こういったヒーローを作るということは、国として『正義』をどう考えるのかを見つめなおす良い機会にもなると思う。という訳で、ぜひNHKにヒーロー番組を作って欲しい。そういう番組を作ってくれるなら、私は義務とは考えずに喜んで受信料を払おう。

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