第六章 対立−二つの朝廷

第五話 潜入、烏丸城

ファクトと会った後、ローレンスはいつも通りエアルスの部屋に来た。彼がノックをして部屋に入ると、エアルスは大きな声をあげた。
「先生、遅いですよ。相手はもう、待っているんですから」
「相手?」
「アッツェの相手ですよ」
「え、これから、ですか?」
「明日にはもうここを立つらしいですから、今日しかないんです」
 ローレンスは息をついて頷いた。
「分かりました。しかし、それが終わったら勉強ですよ。今日、予定していた分は例え夜になってもこなしていただきます」
「分かっていますよ。それより、早くサロンに行きましょう」
 はしゃぐエアルスに腕を引っ張られながらローレンスは連れて行かれた。ドアの前に立つと、中から人のざわめきが聞こえてくる。
「先生、頑張って」
 そう言うとエアルスは自らドアを開けてくれた。
「あ、わざわざ済みません」
 王子に付き人のような真似をさせたことを詫びながら部屋に入ると、驚くような光景が広がっていた。大きな窓から明かりが差し込むサロンの中央には大理石で作られたテーブルが置かれ、その周りには大勢の人々がいた。それも貴族や騎士といった身分の高そうな人達ばかりである。ローレンスはここに入るのは初めてだったが、それでもいつもより多くの人が集まっているであろうことは分かった。
(たかが庶民の遊びなのに、大袈裟だなぁ)
 そんなことを考えながら室内を見渡したローレンスはさらに驚いた。国王、王妃、はてはフィリーやウォルタークといった将軍までがテーブルの周りに座っていたのだ。
(何コレ?)
「おお、やっと登場か。待ちくたびれたぞ」
 国王は上機嫌でローレンスの方を見る。思わず後ろを振り返ってエアルスに尋ねる。
「あの、これは一体、どういうことなんでしょうか?」
「みんな楽しみにしているんですよ、この勝負を」
 半ば呆れているローレンスの傍にウォルタークが歩いてくる。
「あなたまで来ているとは思いませんでしたよ」
 思わずローレンスはそう言った。ウォルタークはそれに対し、無表情のまま答えた。
「王に言われたから来ただけだ。アッツェなんかやったこともない。それよりも早く席に着くんだ」
「はぁ」
 テーブルへ向かうローレンスは、
(他に娯楽がないわけじゃないだろうに)
などと考えながら目線のみを動かして室内の様子を確認した。彼が席に着くと、フィリーに導かれながら一人の男がやって来た。いや、『男』と言うには、彼の正面に座った人物はあまりにも若過ぎた。おそらく、ローレンスよりも五つは下だろうか。まだあどけなさが抜けきらない顔である。
「俺はランドル・セルローグ。よろしく」
 差し出された手に応え、握手をしながらローレンスも自己紹介をした。
「ロックだ。よろしく。しかし君みたいな人が相手だとは思わなかったよ」
「こんなガキでがっかりした?」
「いや、そうは言わないけど…」
 拍子抜けしたのは事実だった。エアルスから話を聞いて想像していたのは、いかにもさすらいの賭博師風の中年男だったからだ。
「まあ、こういうゲームは頭の柔らかい若い人間の方が得意なんだよね。無駄に年食っただけの人間じゃあ俺には勝てないよ?」
「子供でも駄目だろう?確かに頭の柔らかさは重要だけど、それも知識と経験が伴った上での話しだろう?」
「お兄さん、言うねぇ。じゃあ、その知識と経験を見せてもらおうか」
 こうして決戦は開始された。種目は当然のようにイフィール。試合は七本勝負で四本先取した方の勝ち。審判にはウォルタークが選ばれた。
 配られた手札を一通り見た後、ローレンスは顔を上げて相手の顔を見た。ランドルもまた、手札を確認すると顔を上げてローレンスを見ていた。
(幼いのに大したものだ)
 無表情のままのランドルを見てローレンスはそう感じた。そして無表情のまま山をめくり、手札の一枚を表に向けて場に置いた。
(いきなり『剣』を置いたか。スタイルは攻め系か?)
 ローレンスは『振り子』のカードを表に向けて置いた。ランドルは何も言わずに伏せたカードをさらに場に置いた。
(動かないな。それじゃあ、おそらく…)
 ローレンスもまた、場に伏せカードを一枚置く。と、その時、ランドルの後方のあるものに気がついた。だがそれに対して何も言わず、ただゲームを進めた。
 その後は両者とも場にカードを置きながら軽い攻撃を繰り返し、少しずつお互いの山を削っていた。それがしばらく続いた後、ランドルが仕掛けてきた。まず、『弓』で『振り子』を破壊し、続いて『炎獣』と二枚の『ランプ』を使った。室内にどよめきが起こる。
「『業火』?」
「ここでか」
 この時、初めてランドルの表情が変わった。勝利を確信した笑みである。
「さらに、これだ」
 そう言うとランドルは『剣』のカードの上に置かれた三枚の伏せ札を全て表に向けた。
「上乗せか!」
「決まれば終わりだ」
 喚声を背にランドルは呟く。
「さあ、どうする?『鏡』はもう二枚とも、使っちまったよな」
 動きを止めていたローレンスは無表情のまま手札から『ムーンストーン』を出し、伏せ札を二枚、表に向けた。室内がさらに騒がしくなる。
「『ダイアモンド』と『ルビー』?」
「これは三方陣!」
 ランドルの表情は驚きへと変化し、そのまま固まった。
「『炎獣』の罰を受けなよ」
 大攻撃失敗のペナルティーとして、ランドルの山札は全て失われた。必殺の攻撃をかき消され勝利を奪われた彼は平静を取り戻すことができず、あっけなくそのまま四連敗を喫した。
「これが知識と経験だよ」
 そう言ってローレンスはテーブルに散らばったカードを集めていた。室内はいまだにどよめいている。
「…初めてだよ、こんな負け方は」
 ランドルは肩を落として呟く。
「殊勝だね、あっさり負けを認めるなんて」
「これじゃあ、言い訳できないよ」
 背もたれに体重を預けてランドルは天井を仰いだ。ローレンスも同じように天井を見つめ、あることを思い出した。
「そう言えば試合中に気がついたことがあったんだけど…」
「何が?」
「その前に友達を紹介したいんだけど、いいかい?」
「どういうこと?」
 ローレンスはランドルの質問には答えず、衛兵を近くに呼び寄せた。
「ちょっと火浦君を呼んで来てよ。多分、部屋にいると思うから」
「かしこまりました」
 怪訝な表情で自分を見つめるランドルに対し、ローレンスもまた、彼を見つめ返していた。室内はいまだ、騒がしかった。

 翔は寒さに耐えながら黙ったまま風魔の後をついて歩いていたが、しばらくして宿を出発してからずっと気になっていたことを尋ねた。
「なあ、烏丸城ってのは近いのか?」
「いや、距離は結構あるな」
「このままずっと歩いていくのか?」
 翔がそう言うと風魔は少し辺りを見回してから何か思案しているようだったが、すぐに翔の方へと向き直って言った。
「そうだな、そろそろいいだろう」
 そして翔の傍に近寄ってきたかと思うと背中を向けた。
「俺の肩を掴め」
 何事かと思いながらも言われるがままに翔は風魔の肩に手を置いた。
「もっとしっかりとだ」
 訳も分からずその手に力を入れると風魔は少し膝を曲げた。
「いいか、決して離すなよ」
 翔が何か答える前に奇妙な感覚が体に伝わったかと思うと、二人の体は宙に浮いていた。高さにして百メートルほどだろうか。翔は思わず下を見て身を震わせた。
「下手に動くなよ。しっかり俺に掴まっていればいい」
 風魔がそう言うと今度は高速で飛行を始めた。冷たい風が体に突き刺さる。まるでバイクに乗っているかのようであった。
「慣れないかもしれんが、しばらく我慢していろ。すぐに着く」
 翔は振り落とされないよう、しっかりと手に力を入れ直すと風魔に尋ねた。
「これも魔法か?」
「ああ、そんなようなものだ」
「なんで最初から飛ばなかったんだ?」
「この力を使えば近くにいた南雲に気付かれるからな」
 翔は納得はしたが、この寒さはどうにかならないかと思った。グローブを着けてバイクに乗っている時とは違い、むき出しの手は風に晒されて凍ったようにかじかんでくる。風が強くて顔を上げてはいられない。手に神経を集中させてはいたが、辿り着く前に振り落とされてしまうのではないかと思った。
 翔がそろそろ限界かと感じた頃、飛行速度が落ちた。
「見えてきたな」
 翔が顔を上げると、遠くに大きな城が見えてきた。
「問題は阿部がどこにいるか、だな」
 そう言うと風魔は地面に降り立った。そこは城の南に位置する森の中であった。二百メートルほど先にちょうど南の城門が見える。城門の前には三人の衛兵がいた。だが、三人とも何かを話し込んでいる様子で、あまり衛兵としての役割は果たしていなかった。大丈夫だろうとは思いながらも二人は木の陰に身を隠して城門の様子を伺った。
「なんで直接、敷地内に降りなかったんだ?」
 手に息を吐きかけてこすり合わせながら翔は尋ねた。
「あの規模の城には当然、結界が敷いてある。強い魔力なら結界を破ることもできるだろうが、結界を破られたことが知れれば結局は同じだからな」
 考えてみれば当然のことだった。魔法が存在する世界でそれを封じる方法がなければテロや暗殺などが簡単に実行されてしまう。翔がいた世界で機械によるセキュリティシステムがあったように、この世界には結界が存在するのだ。
「で、どうやって中に入るんだ?」
「あの衛兵を黙らせればいいだけのことだ」
 いとも簡単にそう言い放つと、風魔は突然、飛び上がって木に登った。かと思うと、もう別の木に飛び移っていた。木々を跳んで渡っていく音は強い風による木立のざわめきによってかき消される。風魔はあっと言う間に衛兵達の前に飛び降りた。驚いて身構える衛兵に向かって、風魔は腕を横になぎ払う動作を見せた。次の瞬間、衛兵達はその場に崩れ落ちた。
「もういいぞ」
 翔が近寄って衛兵を見ると、三人の衛兵の喉に苦無が刺さっているのが見えた。喉から鮮血が溢れ出す様を見て、翔はすぐに目を背けた。ふと、風魔の方を振り返るとすでに塀の上に登っている。そして辺りを確認すると翔の方へロープを垂らした。翔が低くはない塀をどうにか登り終えて下を見ると、そこには堀があった。
「この城には東と南、二つの門があるが、南門は掘だけで櫓がない。おまけにここから二の丸へ続く道は武者溜まり、さらにそこから天守閣へ通じる道は庭園になっている。身を隠す場所はいくらでもある」
 そう言うと風魔は城壁にそって早足で歩き出した。その後をついて行く翔は、小さい頃に両親に連れられて見学に行った小田原城のことを思い出していた。
やがて武者溜まりに入ると、風魔は近くにあった茂みに身を隠して辺りを見回した。翔もそれに習って茂みの傍でしゃがみ込んだ。
「妙だな…。いくらなんでも静か過ぎる。朝倉とて戦は考えていよう。それならば城内には多くの兵がいるはずだ。それに天皇と阿部を招き入れているにしては警備の者が一人も立っていない。いくら普段は使わない武者溜まりとは言え、おかしい」
風魔は北側にそびえる天守閣を見上げながらそう呟いた。翔は風魔に従うよりほかなかったため、ただ黙って風魔の決断と行動を待った。やがて風魔は意を決したように頷くと立ち上がって歩き出した。
「このまま考えていても埒があかん。それに、警備がいないならそれはかえって好都合だ。当初の予定通り、このまま天守へ向かうぞ」
 そうして風魔と翔は武者溜まりの中を進み始めた。

 武者溜まりを抜けた直後、広くなった通路の一角に小屋があるのを二人は発見した。小屋には明かりもついていないようで、人の気配も感じられなかった。そのため翔はあまりに気にも止めなかったが、風魔は翔に用心しろ、というように無言のまま一瞥をくれるとゆっくりと小屋へと近づいていった。翔がその後をついて行くと、風魔は翔に隠れるように指示を出して小屋の扉に耳を当てた。翔は茂みに隠れたまま様子を窺う。すると風魔はすぐに扉から耳を離しておもむろに戸を開けた。そしてそのまま入口で中の様子を確認していたようだったが、すぐに翔の方を向いて大丈夫だ、というように頷いた。翔は安心して近づいて行き、風魔の後ろから中を見る。あまり大きくはない小屋の中にはいくつもの棚があった。しかしそこにはほとんど何も置かれてはおらず、途中から折れてしまっている剣や曲がった矢などが少しあっただけだった。それよりも目に付いたものと言えば壁に立て掛けられた大量の旗だった。
「どうやらここは武器庫のようだな。もっとも、この様子では今はあまり使われていないかもしれんな。だとすると朝倉も武具集めには苦労していることだろう」
翔はどことなく違和感を覚えたが、あえてそれは口にはせず、戸を閉めて再び歩き始めた風魔の後に続いた。
武器庫を後にした翔たちは、驚くほど簡単に天守閣にたどり着いた。もちろんここに至るまでに衛兵もいたのだが、立番として特定の場所にいるのではなく城内巡回をしているようで、衛兵の姿に気付いた翔たちが身を隠して待っていると辺りを見回しながら歩き去ってしまったのだ。
「さて、問題はここにいるのかどうかだな」
 天守閣を見上げながら風魔はそう呟いた。そして懐から鉤縄を取り出すと三階の屋根に向かって投げつけた。上手く鉤が引っかかったらしく、風魔が縄を引っ張っても外れることはなかった。
「どうだ、登れそうか?」
 翔の方を振り向いて風魔は尋ねる。まるで山のようにそびえ立つ五階建ての天守閣の大きさに翔は息を呑んだ。
「…やってみる」
 もちろん、不安はあった。しかし屋外とは違って隠れる場所も逃走方法も限られた城内を一階から登っていくよりもこちらの方がマシだという思いが、翔にこのアスレチックへの挑戦を決意させたのだ。
 先に登ったのはやはり風魔だった。彼は縄を掴んではいるものの、実際には壁を蹴って駆け上がるようにあっという間に登りきってしまった。そして近くの窓から城内の様子を確認すると、翔に登ってくるよう合図した。
 翔はポケットからバイク用のグローブを取り出してそれをしっかりとはめ、縄を掴んで改めて引っ張った。緩みがないことを確認すると、もう一度、天守閣を見上げて深呼吸をしてから壁に足をつけた。
 始めは順調だった。石垣部分は引っ掛かりが多いこともあって、さほど苦労なく登りきった。しかし足が壁に触れた時、滑ってバランスを崩してしまった。両足を投げ出したような格好になってしまったが、幸い縄をしっかりと握っていたために落ちることはなかった。しばらく両足をぶら下げたままの体勢で深呼吸をしながら早鐘を打つ心臓を落ち着かせると、今度は慎重に壁に足をつけた。そして窓枠やせり出した屋根の裏側などを巧みに利用して、どうにか風魔のいる三階の屋根にまでたどり着いた。安心して大きく息を吐き出した翔に対し、風魔は労いの言葉などは一切発することなく城内の様子を窺っている。そんな風魔に翔は尋ねた。
「どうだ?」
窓自体はあまり大きくなく何本もの柵がかかっていたために、翔がいる位置からでは自分で中の様子を確認することはできなかったからであった。もちろん窓に近寄ってみることも考えたのだが、四つん這いになって屋根から滑り落ちないようにするのが精一杯で、そんな余裕はなかった。
「静かだな。この辺りには見張りもいないらしい」
 風魔はそう答えると、懐から今度は小刀を取り出して窓の柵を切断した。どう見ても簡単に切ったりできるようなものではなかったが、ものの数分で人が通れるだけのスペースを作り出してしまった風魔の技量に、翔はただただ感心した。
 先に内部に降り立った風魔は、辺りを見回した後に床を指で押したり壁に手を触れたりと周囲を一通り調べてから翔に言った。
「大丈夫だ、入っていいぞ」
 屋根の上を這いずるように移動して翔も城内へと入った。内部は薄暗く灯りもついていなかったが、すでに暗闇に目が慣れていたこともあって差し込む月の光だけで室内の様子は何となく分かった。下は床張りだったが一角には畳が敷かれた場所があり、その後ろにはおそらく飾り物と思われる鎧兜が置かれていた。畳敷きの一角の対角線の位置に上階へと続く階段が、そしてその裏側には階下へと下りる階段があった。周囲の壁には何本か槍が掛けてあったが、そのほかには特別、何も見当たらなかった。
 室内を見回す翔にはお構いなしに、風魔はもう階段を上り始めていた。翔もなるべく物音を立てないようにして後に続いて登る。そしてこの短い階段を上りきる直前に、風魔は歩を止めて頭だけを出して上階の様子を窺っていた。翔も後ろから上の様子を見上げていたが、暗かったためにほとんど何も見えなかった。
「ここも大丈夫なようだな」
 風魔はそう呟くと再び階段を上った。後に続いた翔が上りきる頃には、すでに風魔はすぐそばにあった次の階段を上り始めていた。そのため室内の様子を確認することもなく、翔もその後に続いて上り始めた。風魔の背中を見つめながら上るうちに、翔は自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じた。風魔は今度は途中で立ち止まることもせずにそのまま階段を上りきった。
(上にも誰もいなかったのか?)
 そう思いながら上りきった翔に、風魔は声を掛けた。
「どうやらお待ちかねだったようだ」
先程までと違って、今度は室内には数本の蝋燭があった。そのためこの階は非常に明るく見えた。部屋の奥には座布団も敷かずに直接、床に座する人物の姿があった。
「やはり来たか」
明るいこともあったが、無表情でそう呟くその人物の顔を翔が見間違えるはずもなかった。
「阿部…」
 貴族の正装を着こなし、余裕たっぷりの様子で落ち着き払っているその男を睨みつけながら、無意識のうちに翔は拳を握っていた。身構える彼を制するように風魔は翔の前に立った。
「わざと警備の手を緩めて俺たちを誘き出した、という訳か」
「そんなことはしないさ。いつも通りの警備体制だ。…実際、この世界にはあまり防犯思想とか、そういうものはほとんどないらしいな。日本も大きなことは言えた義理ではないが、それにも増してここはひどい。将軍が暗殺されるわけだ」
「今度はお前がその報いを受けるんだ」
 挑発するかのような阿部の言葉にも風魔は動じることなくそう答えた。しかし阿部は風魔の言葉を無視して言った。
「土方翔。そいつの後ろでコソコソしていないで出てきたらどうだ?あの話の返答を聞こうか」
 射るような視線に翔は一瞬、怯んだ。そして足が震えるのを感じた。
「あいつの言葉に耳を傾けるな」
 そう言う風魔の言葉など耳にも入っていない様子で、翔は唾を飲む込むと一歩、前へ踏み出した。
「阿部、俺は…、俺はお前を止める」

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