第七章 動乱−揺れる登陽

第一話 正体

 ライルはなるべくミュウのことを考えないように、そしてこれから迎える結婚式をなるべく何事もなく終わらせられるようにと考えていた。そのため、夕食の時にバランタインより送られた葡萄酒を味わうことを忘れなかった。
「どうだ?これは外にはめったに出さない一級品らしいぞ」
「うん、美味いよ」
 上機嫌で話しかけてくる父親を多少、鬱陶しくも感じながらライルは答えた。しかし実際のところ、バランタインの葡萄酒はこれまでに何度か飲んだことはあったが、そんな中でもこれは格別であった。深く紫がかった緋色の液体は口元に運んだだけで強く、しかし心地よく鼻腔を刺激し、口に含んだ瞬間に葡萄の甘味とその奥に潜む苦味と渋みとが微かだが鮮烈に浮かび上がる。それでいてすっきりと喉を通り過ぎていく後味の良さにライルはついつい飲みすぎてしまった。
 気がつけば彼はベッドの上に横たわって、すでに陽も登っていた。身を起こすと頭痛がする。ベッドに腰掛けたまま頭を抑えると今度は気持ちが悪くなった。
(これが二日酔いというやつか)
 生まれて初めての体験だった。体も何となく重かったが、無理矢理立ち上がってテーブルに置いてあった水を一気に飲み干すと、軽く頭を振った。そうするとまたもや頭痛が走った。
(赤葡萄酒は一番悪酔いすると言うが…)
 頭を抑えて深呼吸をすると、部屋を出て洗面所へ向かった。
「おはようございます」
 すれ違う衛兵に声を掛けられると、それが頭の中で鐘を打ったように響く。
「ああ…」
 どうにか答えながら洗面所に辿り着き、井戸から汲んだばかりの冷たい水で顔を洗うといくらかサッパリした。そして顔を拭いて部屋に戻ろうとした時、先程すれ違った衛兵に再び声を掛けられた。
「公子様、バランタイン様がお見えになっておられます」
「もう?こんな朝っぱらからか?」
 衛兵はキョトンとした顔をして答えた。
「もう昼でございますが…」
 それを聞いてライルは、
(昨夜はかなり飲みすぎたようだな)
と思った。体調はすぐれないが、挨拶に行かなくてはならない。浴室で体を拭くと、着替えを済ませた。
(そう言えばどこにいるのか聞かなかったな)
 先程の衛兵を探すのも面倒に思われたので、ライルは北棟へ向かった。この大公邸は東西南北に棟を配し、中央に庭園を設けている。南は主に大公が執務を行う政務棟、東は大公家、西は重臣たちがそれぞれ住まう棟、そして北棟は国賓を迎える棟となっているのだ。そのためライルは北棟へと向かったのだった。
 私室のある東棟を出て北棟へと続く庭園の道を歩き始める。穏やかな風が木々を揺らす。枝々の隙間から時折、彼の顔に木漏れ日が当たる。昼時の太陽から降り注ぐ日差しに目を細めながら歩いているうちに、池の近くに差し掛かった。水面に反射する光はより一層、二日酔いのライルを攻め立てる。手でひさしを作って歩いていると、池の傍に人影が見えた。
(誰だ?)
日よけのためか大き目の帽子を被っている上に真っ白い服を着ていたので日光を反射させて見づらかったが、服装からどうやら女性らしいことは分かった。眩しいのを我慢しながら立ち止まって目を凝らしていると、どこからか声が聞こえてきた。
「姫様ぁ、どちらにいらっしゃいますかぁ」
(姫様?もしかしてあれがバランタインの?)
ライルはその正体を確かめるべく、歩いて近寄って行った。相手はライルにも遠くからの呼びかけにも気がついた様子はなく、じっと足元の池を見つめているようで何の動きも見せなかった。後ろから見たその女性は小柄で細身で、『フィナンセ姫』と呼ばれているのが分かるような気がした。相手が何の素振りも見せないので、ライルは後ろから声をかけた。
「あの…」
「はい?」
 帽子を押さえ、スカートを翻して振り向いたその女性の顔を見てライルは動きが止まった。相手の女性もライルの姿を見て動きが止まった。互いにしばらく信じられないものを見たかのように瞬きをして相手を見つめていたが、やがて女性の方が口を開いた。
「どうして…、どうしてあなたがここに?」
「ミュウ、君こそ、…何で?」
 見間違えるはずもない。ライルの目の前にいるのは、ミュウその人であった。ライルが何かを言おうとした時、足音が聞こえてきた。口を開きかけたままそちらの方を見ると、年配の女性がこちらへ走ってくるのが見えた。
「姫様、こんなところに」
 二人の傍に来たその女性は、息を弾ませながらミュウに言った。
「姫様、お気持ちは良く分かりますが、ここまで来て世話を焼かせないでください」
 ミュウを諌めるとその女性は今度はライルの方へと振り向いた。
「どうも申し訳ありませんでした。ここからは私が案内いたしますので、お仕事にお戻りください」
 どうやらこの女性はミュウの侍女らしいが、ライルのことは分かっていないようだ。言葉を失ったライルが二人の様子を見て立ち尽くしていると、ミュウは侍女の腕を掴んで言った。
「ごめんなさい、もう大丈夫だから」
 そしてライルの方を向いて、
「それではまた後ほど」
 と無表情に言って侍女を連れて立ち去った。ライルはその様子を見送りながら頭の中の整理を始めた。

 勝負が終わってからしばらく経つというのに、未だに観客たちは興奮が冷めぬようで、ランドルとローレンスの周りに集まって色々と話しかけていた。ランドルはそれらに受け答えをしながらもローレンスの方を時々見ていた。先程、彼が言いかけたことが気になっていたからである。一方のローレンスはと言えばランドルに一瞥をくれることもなく取り囲んでいる人々と楽しそうに話をしているばかりで、ランドルのことを気に掛けた様子もない。ランドルはやがて椅子から立ち上がり、自分を取り囲む人々をかきわけながらローレンスの傍へと近寄った。
「なあ、あんた。さっきは何を言いかけたんだ?」
「ん?まあ、もうちょっと待ってよ」
 ローレンスは座ったまま、そう答えた。ちょうどその時、部屋の戸が開いて衛兵に連れられて二人の男が入ってきた。火浦とファクトである。
「あ、ちょうど来たみたいだよ」
 そう言うとローレンスは立ち上がって二人の傍へと向かった。
「ファクト君も来たんだね」
「ああ、ちょうど戻ってきていたからな」
「火浦君、さっきのことは話した?」
「ああ」
 ローレンスの後をついてきたランドルは、二人をジロジロと見るとローレンスに尋ねた。
「友達ってのは、その二人?」
「そうだよ」
 ローレンスがそう答えると、火浦達が現れたことに気が付いた国王が大きな声を上げて寄って来た。
「おお、お主等も来たのか。いや、素晴らしい勝負だった。お主等二人の試合と同じくらい興奮させてもらった。それを見られなかったのは残念だったな」
 上機嫌の国王はファクトと火浦の肩を叩きながらそう言った。ファクトは呆然としていたが、火浦は鬱陶しそうにしていた。それまで思い思いの場所で歓談をしていた人々も、国王を中心に若き英雄達が集うこの場所に集まってきた。
「セルローグ殿、この二人はな、先日、御前試合の決勝戦を戦った火浦とファクトだ」
(その二人が俺に何の関係があるんだろう?)
 そう思いながらもランドルは握手を求めて右手を差し出した。
「ランドル・セルローグだ。よろしく」
 火浦はランドルの右手を握って名乗った。周りから拍手が起こる。
「火浦拳だ」
 しかし名乗った後も火浦は手を離さなかった。不審に思ってランドルが火浦の顔を見ると、今度はファクトが左手を差し出してきた。
「ルザル・ファクトだ」
 一瞬、どうしようかと思ったランドルだったが、左手を差し出してそれに応えた。またも拍手が沸き起こる。だが火浦同様、ファクトもまたその手を離さなかった。両手を二人の男と握り合ったままという奇妙な格好のまま、ランドルは火浦とファクトの顔を交互に見た。しかし二人はそんな彼をお構いなしにそのまま話を始めた。
「イフィールというのは、俺はあまり詳しくは知らないが複雑で大変なものなんだろう?」
「元々はラードルールでやってたんだってな。やっぱりフレリオあたりなのか?」
 質問に答えながらも自分の状態に戸惑っていたランドルは、まるで助けを求めるかのようにローレンスを見たが、彼はただ黙って微笑みを浮かべながらその様子を見ているだけだった。
(ちょっとこれ、どうすんの?)
 仕方なくランドルは二人に手を離してもらおうと話しかけようとした。
「あの…」
「いや、しかし大したものだ。ラードルールでは無敗だと言うじゃないか」
「ああ、全く大したものだ」
 しかし火浦もファクトもランドルの言葉などは耳に入っていないかのようにしゃべり続けている。ランドルは困ってしまってはいたが、その言葉が自分を褒め称えているものであったのでそんなに悪い気はしなかった。
「こんなに若いのにな」
「そうだな、こんな少年が世間を騒がせているあの『カード』だなんて誰も思わないだろうな」
 ちょっと照れながら二人の言葉に耳を傾けていたランドルだったが、火浦のその一言で動きが止まった。国王、そして彼らを取り囲む者のうち、近くにいた者たちも言葉を止めた。
「何だって?」
 思わずそう呟いた国王の目は大きく見開かれていた。火浦は国王の方を向き、冷静に言った。
「この少年こそが、あの盗賊『カード』ですよ」
 国王はランドルの方へと向き直り、彼をまじまじと見つめた。彼らを取り囲む人々も少年を見つめ、そして人だかりの中心から外側へと情報が伝達していくに従って部屋の中が騒がしくなっていった。当のランドルは何が起こったのか信じられないような顔をして動けなくなっていた。
「さて、ウォルターク殿、これでよろしいかな?」
 国王の隣にいた将軍に向かって火浦は言った。ウォルタークは動揺を見せる国王や騒ぎ始めた周囲の人々とは正反対に、冷静に腕を組んだまま言った。
「そいつが本当にあの『カード』なのか?」
「そうですよ」
 その問いに答えたのはローレンスだった。そして彼が何やら呪文を詠唱すると、ランドルの傍に透き通った白い蝶が現れた。
「この間、『カード』が仕事をした時にたまたま出くわしましてね。その時にこれに彼を追わせていたんですよ」
 ローレンスの言葉を聞いてランドルはローレンスの顔を改めて見つめた。
「なるほど、そういう訳でしたか」
 これまでずっと国王の後ろにいた王妃がそう呟いた。
「この勝負の場に無粋なパピヨン、消してしまおうかとも思いましたが、あなたは気が付いていながらそのままにしていたので、私も気が付かなかった振りをさせていただきました」
「さすがですね。仕掛けた本人でもないのにこれが見えるなんて」
「いえ、王に害をなす者がどこに紛れ込んでいるとも知れませんから、日頃から注意をしているだけです」
 そう言うと王妃は会釈をして後ろに下がった。
「そうか、暗くて良くは見えなかったが、あの時にいたのはあんただったのか」
 ランドルは天井を見上げてそう呟いた。
「そういうこと。まさかそっちから現れるとは思わなかったけどね」
 笑顔でローレンスは答える。
「…ふぅ。あんたとはトコトン、相性が悪いらしい」
「さっきの勝負もそうだったけど、随分と往生際がいいんだね」
「両手を掴まれて逃げようなんて思わないよ。この二人、御前試合の優勝者と準優勝者なんだろう?」
「なるほど、どうやら本物らしいな」
 ウォルタークは頷きながらそう言うと衛兵を呼び寄せてランドルに縄をかけて連行させた。苦笑いを浮かべながらランドルは一度だけローレンスの方を振り返ると、衛兵に従って歩き始めた。
「そうか、あの少年が…」
 国王はその様子を見送りながら何かを考えているようだった。

風魔は翔の前に出ると、阿部を睨みすえたまま振り向きもせずに言った。
「お前は下がっていろ。これは俺の役目だ」
翔は風魔が自分の前に立ったことにより気勢が削がれたが、逆に安心もした。勢い込んで言った台詞とは裏腹に、自身の体が阿部を怖れていることを分かっていたからだ。翔は足に力を入れて深く息をつき、自分がどうすべきか考えていると、阿部は鬱陶しそうな表情をして風魔に一瞥をくれると下を向いて呟いた。
「あんたの相手は他にいる」
 そして阿部は懐から紙を取り出して何やら呟き始めた。真っ白い、短冊のようなその紙には何か文字が書かれているようだった。しかしそれがなんという文字かまでは翔には分からなかった。阿部は短冊を人差し指と中指の間に挟み、薄目を開けて呟き続けている。風魔も翔も動けなくなっていた。それは阿部の様子に目を奪われているせいもあったが、何か空気が変わったかのような、異質な感覚を覚えたからでもあった。これまでに味わったことのない戦慄のようなものが二人の体を捕えてはなさなかったのだ。
やがて呟きが終わったかと思うと、阿部は短冊を宙に投げた。すると、その紙は小さな煙を上げて別のものへと変化した。巨大な体躯、それを覆う筋肉、赤黒い皮膚、逆立った頭髪、鋭い牙と爪、白くむかれ理性も知性も宿さぬ目…。それは正に鬼そのものであった。
「召喚術?貴様、術師か」
 ようやく我に返ったかのように風魔は鋭く言い放つ。
「あんたの相手はコイツにしてもらう」
 阿部はいつもと変わらぬ様子で淡々と答える。
「ちっ」
風魔は舌打ちしてその恐るべき相手に向かって身構えたが、異形の生物を間近に見た翔はすくんで動けなくなってしまっていた。阿部はそれを見透かしているかのように言う。
「どうした、土方翔。そいつはその忍の相手だ。お前には何もしない。それよりも、俺を止めるのだろう?今なら邪魔は入らないぞ」
 そして阿部はゆっくりと立ち上がり翔の方へと歩を進める。風魔はそれを遮るかのように立ち位置を変えようとしたが、その瞬間、鬼が風魔に襲い掛かった。風魔は横に飛び退いてその爪先をかわしたものの、翔との距離が離れてしまった。素早く体勢を立て直したが、それと同時に鬼が再び襲い掛かる。風魔は最早、翔どころか自分の身を守るのに精一杯だった。動くこともできずにそれを見つめていた翔の眼前には、もうすでに阿部が立っていた。
「土方翔、もう一度言おう。俺の仲間になれ」
「言ったはずだ、俺はお前を止める」
 体が阿部を怖れているのは自分でも分かっていた。目の前で鬼を召喚する様を見せ付けられてはなおさらである。しかしそれでも翔は大きな声を上げて答えた。それは、何があろうとも阿部とは決して相容れることはできない、という確信が心の中にあったからだ。
 翔の叫びを聞いた阿部は、黙ったまま翔の目を見つめていた。その表情は何の感情も感慨もないかのようであった。翔も睨み付けるように阿部を見つめ返す。やがて阿部は翔に背を向けて呟いた。
「そうか。ならば残念だが仕方がないな」
 そして再び翔の方へと振り返ると、射る様な視線を翔に向けた。
「なら来い。安心しろ、術は使わない」
 阿部は足を肩幅に開き、両腕をダラリと下ろした格好で立っていた。一見、無防備にも見えたが、それは自然体で隙のない構えであることが翔には分かった。
「お前、何かやっているな?」
そう言いながら翔も自然に足を半歩引き、両拳を握って構えていた。
「そういうお前こそ空手をやっているのだろう?どうやら俺とは流派は違うようだがな。しかしちょうど階級は同じくらいのようだな」
 阿部は不敵に笑う。このまま対峙していると完全に阿部に呑まれてしまう。そう感じた翔は拳を握り直し、正拳突きを放った。しかし阿部は舞うような動作で手で円を描くようにその拳を受け流すと、体勢を崩している翔の心臓の辺りへ掌底を打ち込んだ。
「がはっ」
 打撃自体にそれほどの重さはなかったが、一瞬、呼吸が止まり、胸を押さえて前のめりになった翔に、阿部は容赦なく追撃をかけた。鋭く振られた肘が側頭部に命中する。目の前に星が飛び散る感覚を味わいながらも翔は大きく後ろに跳び退った。
「なんだ、こんなものなのか」
 翔は頭を振って阿部を睨む。
「貴様ぁ」
 猛り狂った翔は再び阿部に飛び掛る。しかしその攻撃は全てかわされ、その代わりに的確に急所を狙った反撃を受ける。出血こそなかったものの、体中が痛みで悲鳴をあげているようだった。
(このままでは、…勝てない)
 そう思った翔は、一瞬、風魔の方へと視線を向けたが、風魔もまた鬼の攻撃をかわすのに精一杯であったようだった。
「この期に及んで、まだ他人を当てにするのか?」
 阿部は蔑むような視線を翔に向けた。そんな阿部の態度に、翔の心は怒りで満たされた。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 怒号をあげて阿部へと向かって行く。冷静にその動きを見極め、それをかわそうとした阿部であったが、一瞬、何か唸ったかと思うと、その動きが止まった。そのため、翔の全体重を乗せた大振りの突きを顔面に受けた。慎重は翔よりも高いが、痩せていて体重はそれほどない阿部は、その突きの勢いで数メートル、後ろに吹き飛んだ。息を荒げている翔を見つめながら阿部は起き上がる。
「ここまでか。まあ、こんなものだろうな」
 阿部がそう言ったかと思うと小さな煙があがり、その姿を消してしまった。そしてその跡には紙が一枚、残されていた。それは先程、鬼を呼び出した時に使った物と同様に、文字の書かれた短冊のようなものであった。と、同時に風魔を襲っていた鬼も消え、短冊が残された。呆然と立ち尽くす翔をよそに、風魔はその短冊を拾い上げじっくりと観察した。
「式神か」
「式神…?そう言えば聞いたことあるな。確か陰陽術とかで使われるようなやつだったな」
 幾分、平静さを取り戻した翔はそう呟く。風魔は翔の言葉を聞いて何か納得したようだった。
「なるほど、アースの人間がなぜ術などを使えるのかと思ったが、アースにも同じようなものがあるらしいな」
「あ、いや、俺たちの世界じゃ、こんなものは誰も信じちゃいない。ほとんど作り話と思われているようなものだ」
「そうか、まあしかし、そんなことはどうでもいい。それよりも問題なのは、あれほど精巧な、人間に近い式神を作ることができるということだ。どうやらヤツは術者としても相当な力を持っているようだな」
「そうだな。まるで本物の人間のようだった」
 翔は残された短冊の一枚を拾い上げて見つめた。と、その時、頭の中に一つの疑問が浮かんだ。
(待てよ…。なら、本物の阿部はどこにいる?)
「しまった、そういうことか!」
 翔は突然、大きな声を上げた。
「どうかしたのか?」
 翔とは対照的に、風魔はやはり冷静である。そんな風魔の様子に多少、苛立っているかのように翔は叫んだ。
「早くここを脱出しよう。光明が危ない」

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