第七章 動乱−揺れる登陽

第四話 剣聖、出陣

ラナンとペギラが艦に戻ると、ルノー達はちょうど食堂に集まっていた。
「お帰りなさい。ニアノ先輩、どこに行っていたんですか?」
「王国。それよりもミーナは?」
 ラナンは、目を輝かせて質問してくる後輩に対して簡潔に答えると、この場に唯一、居合わせていなかったメンバーの行方を尋ねた。
「艦橋で辺りの様子を調べていましたよ。それで、王国で何か見つかったんですか?」
「詳しいことはペギラに聞いてくれ」
 マリエの質問から逃げると、ラナンは食堂を後にした。

「お疲れ様。悪かったね、留守番なんて頼んで」
 後ろから声を掛けられたが驚いた様子もなく、ミーナは椅子を回してラナンの方へ向き直った。
「お帰りなさい。別に構わないわよ。マリエもまだ本調子じゃないしね。それよりどう?何か成果はあったの?」
「まあまあ、かな」
 そう答えながらラナンはミーナの正面の椅子に座った。
「そう言えば海老名に会ったよ。相変わらずだな、あいつも」
 それを聞いてミーナは複雑な表情をした。そんなミーナを見て、ラナンは不思議に思った。
「どうかしたのか?」
「…怒ってないの?」
「何を?」
「だってこの間、彼と通信した時には怒鳴っていたじゃない」
「…ああ、そのことね。ま、色々とあるのさ」
 ラナンは答えをはぐらかして立ち上がると、ミーナに背を向けて辺りのモニターを見回しながら尋ねた。
「それで、留守中に何か変わったことはあったかい?」
「至って平穏。ついでだからこの辺りの様子も調べてみたけど、別に変わったところはなかったわね」
 ミーナがそう答えた時、電子音が鳴った。
「通信?本部からかしら」
 そう呟きながら回線を開くと、正面のモニターに金髪の女性が映った。
「あら、サラじゃない。久し振り…ってほどのこともないわね」
「そうね。…ラナンもいるのね。ちょうど良かったわ」
 そう答える彼女は真剣な顔付きをしていた。元々、愛想の良い方ではなかったが、その表情と声の調子から、ただの挨拶や世間話のために連絡をしてきた訳ではないということは容易に察せられた。
「どうかしたのか?」
「ラナン、その艦に何かあったの?」
「ニナからアルケンに連絡がいっただろう?魔神に襲われて、ちょっと壊れているんだ」
「壊れて…、ってどこが?」
「転移装置が使えなくなった」
「やっぱり…」
「やっぱりって、どういうことだい?」
「いえ、何でもないわ。それより、原因は?」
 ラナンは説明をしようとしたが、口を開きかけてミーナの方を向いた。ミーナは軽く頷くと、ラナンの代わりに答えた。
「正確に言うと、壊れたのは転移装置ではないわ。FDB回路の一部が焼き切れているのよ」
 それを聞いてサラは考え込んだ。
「FDB回路…。だとすると交換が必要ね。簡単に修理できる場所ではないわ」
「ああ、ニナもそんなことを言っていたな」
「でもその艦で使われているコンピューターのほとんどは汎用のものじゃないから、新しく作る必要があるわ。予備のパーツなんかもないし、ほかものを流用して作ったとしても、かなりの時間がかかるわね」
「うん、それもニナに聞いた」
「他には?」
「ん?…ああ、左舷のカタパルトが破損している程度だ。それほど深刻なものじゃない。通常航行には問題ないしな」
「そう。…ラナン、落ち着いてよく聞いて」
 声のトーンを落としてサラがそう言うのを聞いて、ラナンは自然と身構えた。
「本部は、あなたたちを切り捨てるかもしれない」
「ちょっ、…どういうこと?」
 ラナンが口を開くよりも早く、それまで横で聞いていたミーナが声をあげた。
「私もちょっと聞いただけなんだけど、転移装置が故障してこちらに戻って来られないならラントとボードの繋がりを断ち切ったままにした方がいいという意見があるの。あなた達がそちらにいれば彼らの目を引き付けることもできるしね」
「冗談じゃないわ。彼らだってフォースロードを開くぐらいのことはできるわ。だいたい、エンジェルがいつまでも私たちに構っているわけないじゃない」
「エリルさんもそう言ってはいたけど…」
 落ち着いた様子で、ミーナをなだめるようにラナンは言った。
「黙っていて悪かったけど、エリル中佐には前に言われていたんだ。民和党がうるさいから、成果を挙げるか次の議会が終わるまでは帰ってくるなって、大統領府から要請があったってね」
 しかしその言葉を聞いてサラは暗い声で言った。
「いいえ、ラナン。そんなに簡単な話じゃないわ。今回の話、実は軍本部が出所みたいなの」
「なんだって?」
 それを聞いて、ラナンはしばらく考え込んでから言った。
「おそらくそう言い出したのはゲスティオール准将あたりだろうな」
「そこまでは分からないわ。私もエリルさんからちょっと聞いただけだから」
「いや、きっとそうだろうさ。あの人は前々から特務チームには反対していたからな。あの人のせいで特務チームプロジェクトは一時、凍結されたことがあるくらいだ」
「反対?どうして?」
 不思議に思ったミーナが尋ねた。
「最新鋭の機体にチームの指揮権。尉官に与えるには大きすぎるものなのさ。たぶん、准将は最初の特務チームのことを引き合いに出したんだろう。聞いたことがあるだろう?ファウンデーションはその大半が戦死したうえ、リーダーをはじめとする何人かは機体と共に行方不明になっているんだ」
「なるほどね」
 そう答えたミーナの表情は暗く沈んでいた。ラナンも無表情のまま黙ってしまい、その場には重苦しい空気が流れた。
「とにかく、なるべく早く回路を作ってそちらに送るわ」
 その雰囲気を断ち切るかのように、サラは言った。
「そうだな、よろしく頼むよ」
「分かっているわ。大変なことになってきているけど、無理はしないようにね」
「ああ、ありがとう。それじゃ」
 そう言うとラナンは通信を切った。
「ミーナ、このことはみんなにはまだ黙っていてくれ」
「ええ、わかったわ」
「悪いね。何かミーナには苦労ばかりさせているね」
「あなた一人で背負い込むことはないじゃないの」
 思いのほか落ち着いたラナンの様子を見て、ミーナは少し安心して笑顔で答えた。

 市中の火事、そして屈辱的な敗戦の事後処理が一通り終わろうかとしている頃、光明が芝田の下へと現れた。宿の玄関口で部下たちに色々と指示を出していたが、光明の姿に気が付くと後のことを筒木に任せて光明に声を掛けた。
「光明殿、具合は?」
「もう平気だ。みっともないところを見せてしまったな」
 心配するような芝田の表情が光明にとってはかえって辛かった。父親が暗殺され、近いうちに自分が中心となって幕府を運営していかなければならない立場でありながら、現実の戦闘を見ただけで平静を失ってしまった自分を光明は恥じていたからだった。芝田はもちろんそんな彼の細かな心の内など知る由もなかったが、その様子から気にしているらしいことを察して、それ以上、何も語らなかった。光明が何か言おうとしたちょうどその時、二階から仙斉が降りてきた。
「光明様、お加減はもうよろしいので?」
「ああ、迷惑をかけたな」
 仙斉の方を向いてぎこちない表情でそう答える光明の様子から仙斉もまた、何かを感じ取ったようだった。そうしてやや沈黙があった後、光明は芝田の方へ向き直って尋ねた。
「これからの行動は?」
「こちらでのことが済み次第、護兵を追おうと考えている」
「ということは、このまま繰場砦へ?」
 それを聞いて仙斉は口を挟んだ。
「閣下の下へ戻られるのではなかったのですか?」
 芝田は玄関に腰を下ろすと腕組みをしながら答えた。
「もちろん最初はそのつもりだった。しかし思ったよりも後始末に時間がかかりそうだからな。それから閣下の下へと戻ったのでは、奴等に体勢を整える時間を与えることになる。それに、あまりグズグズしていると喜山たちが到着してしまうだろう。その後にノコノコと出て行くのも面白くなかろう?」
「ははぁ…」
 仙斉は歯切れの悪い答えを返したが、それを芝田はあまり気にした様子もなく続けた。
「実はその旨の文書はすでに閣下へ送ってある。独断で済まないとは思ったがな」
悪びれもせずにそう言う芝田に対し、仙斉は咎めだてるよう言った。
「兵達の中には負傷している者もいれば、消火活動で疲れている者もいます。それはあまりにも性急でしょう」
 しかしそれに対して今度は光明が口を挟んだ。
「いや、敵に時間を与えるべきではないとは私も思うし、こちらが動き出せば父上も砦へと向かうだろう。父上にはそちらで会えば良いだけのこと。こちらの兵達とて、緒戦は後詰に回れば負担も少ない。芝田殿の考えが一番だろう」
 芝田が今は亡き父親に面会を求めるようになっては困ると考えて光明はそう言った。
「…光明様の仰ることももっともですな。ではそういたしましょう」
光明の話を聞いて、冷静さを取り戻したと受け止めた仙斉はそう答えた。

 芝田の軍勢が皇居前に到着した頃、小早川はすでに手勢を整えて宿に戻って来ていた。芝田から将軍へと送られてきた密書は、当然のように小早川が受け取った。そして南雲を私室に呼び寄せ、その内容について吟味していた。これは今後の方策について将軍の死を前提とした話し合いが必要であり、それができる者が限られていたからであった。それ故当然、この場には他の者の姿はなかった。
「芝田殿らしいな」
「ええ」
 それが小早川と南雲の感想であった。
「敵に時間を与えたくないというのも嘘ではなかろうが、それよりも一方的にやられておめおめと帰る、というのは芝田殿の心情も信条も許さなかったのだろうな」
「そんなところでしょう。市中の火事、突然の奇襲、そして勾玉を持ち去られたこと…。芝田様にとっては、はらわたが煮えくり返るような思いだったでしょう。しかし結果的にこれはこちらにとって都合の良い展開とも言えます」
「そうだな。芝田殿には申し訳ないが、な。こちらの思惑通り繰場砦へと逃げ込んでくれたし、勾玉を持ち去ったことで決着をつけるまで追い続ける理由にもなる。こちらもすぐに砦へ向かい、喜山達が到着しないうちに本陣を定めれば、閣下は表へ出ずに陛下のお姿のみで誤魔化し通すことができよう。…そう言えば大京からの援軍の件はどうなった?」
 小早川は将軍の名を借りて芝田を皇居へと向かわせると同時に、大京の副将軍へと援軍の依頼していた。繰場砦での戦いに際して近隣大名からの援軍は期待できたが、万が一、将軍の死が漏れた場合にはそれがそのまま敵とならないとも限らない。そのため大京からの援軍を必要としたのだった。また、この援軍には、将軍の死体を秘密裡に大京へと運ぶことと新帝を安全な大京へ移すという役割もあった。
「御剣を送るとのことです」
「御剣?前原殿でも笹本殿でもなく、か」
「我々が大京を発ってから、あちらでは物価の上昇、治安の悪化、作物の収穫高の低下、奉行の収賄発覚などいくつかの問題が連続して起こっています。前原様や笹本様もちろん、主だった武将は皆、その対応にあたっているようです」
 小早川は溜息をつき、呟くように言った。
「そうか、熱海様も心労が重なるな…。しかしなるほど、それで御剣か」
「このことに関してはかえって良かったとも言えるでしょう。何しろ御剣には野心というものはありませんから」
「そうだな。それどころか御剣はそれほどの武勲があった訳でも、閣下と個人的な繋がりがあった訳でもないのに指南役に取り立てられたことによって、忠誠というよりも恩義を感じている。一番安心して迎えられる人間とも言えるな」
「はい。ましてや新当主の夢幻斎は政治のことになど全くの興味がない人間。唯一の心配は、彼自身、今回が初陣ということぐらいでしょうか」
 南雲の言葉を聞いて小早川は驚きの声をあげた。
「なに、御剣は代替わりしたのか?」
「ご存知ありませんでしたか。少し前の話になりますが、御剣は一人息子の夢幻斎に家督を譲っております。それも夢幻斎が実力で宗近殿を超えたからだと」
 小早川は少し考え込んでから答えた。
「…そうか。初陣というのは気にかかるところだが、そこは我々が補ってやれば良い。総合的に見て、状況は悪くない方向に進んでいると言えるな」
「はい。後は風魔が戻ってくればこちらもかなり動きやすくなるでしょう」
「風魔はまだ戻ってこないのか?」
「ええ。しかし土方も同時に姿を消したことを考えると、大体の察しはつきます。ともすれば、風魔は我々に朗報をもたらすかもしれません」
「期待して待つことにしよう。それでは我々も早々にここを発つか」
 小早川はそう言うと、密書を懐にしまい込んで立ち上がった。

 皇居を脱出した神楽はすでに繰場砦に入っていた。神楽が芝田の追撃を恐れるあまり、休むことなく行軍を続けたために思いの外、早く到着したのだったが、その代償として護兵も馬も疲労しきっていた。馬車に乗っていた神楽には当然、そんなことなどは分かるはずもなく、また、彼自身、そういったことを気にかける人物でもなかったため、護兵達に労いの言葉を掛けるといった気遣いなどは見せなかった。それ故、『あの状況で芝田の追撃などあり得ない』と思っていた護兵達は口にこそ出さなかったが、不満を抱えているものも多かった。
 到着するや否や砦の主室に駆け込んだ神楽であったが、阿部はその知らせを聞くと神楽のことは放っておいて、まずは砦の外に出た。そしてその場にへたり込んでいる護兵達に酒を振舞った。その後、新帝の無事を確認すると、河原崎を呼び寄せて神楽の待つ主室へと入った。
「遅くなりまして申し訳ありませんでした。よくぞご無事で」
 阿部がそう言いながら腰を下ろして頭を下げると、河原崎も黙ってそれに続いた。
「いやなに、思ったよりも簡単だったな。幕府軍に苦戦することもなかったし、追撃も上手くかわせたようだ。帝もご無事で、勾玉もほれ、この通り」
 そう言うと神楽は懐から無造作に十二の石が連なる勾玉を取り出して二人に見せた。しかし阿部も河原崎もあまり興味のない様子でその勾玉に一瞥をくれただけであった。
「さすがは神楽様。幕府随一の猛将と言われる芝田を手玉に取るとは、武将としての才覚もおありのようで」
「そうか。いや、実際、芝田の軍は大したことはなかったな。抵抗らしい抵抗もできず我々にされるがままだったからな。あれで猛将とは、ちと過大評価に過ぎるのではないか?」
(あるはずのない追撃にビクビクしていたくせによく言う。あれだけお膳立てしてやって何もできなければ本当のクズだ。それすらも分からんお前は、武将どころか人の上に立つことすら許されぬ人間だ)
 阿部はそんなことを考えていたが、当然、顔に出すことはなかった。それどころか逆に、驚くべき言葉を発した。
「これは私の勝手な考えではございますが、それほどのお力を持つ神楽様には、この度の戦で是非とも総大将を務めて頂ければ安心なのですが…」
 すかさず河原崎は追従した。
「ふうむ、それは良い案だ。私とて、芝田と戦えと言われればきっと苦戦しましょう。その芝田さえ打ち破った神楽様こそ、総大将に相応しい」
 言葉ではそう言っていたが、あくまでも無表情でありそれが本心からの言葉かどうかは分からなかった。しかし神楽はその言葉を額面どおりに受け取った様子で、満面の笑みを浮かべた。
「何を大袈裟な。剣聖と謳われた河原崎殿を差し置いて私などが総大将など…。他の武将も納得しようはずがなかろう。それに前帝の信頼厚い阿部殿こそ、この軍の指揮を執るべきなのでは?」
 一応の謙遜はしていたものの、満更でもない様子であるのは誰の目にも明らかだった。阿部は馬鹿馬鹿しいと思いながらも続けた。
「いえ、神楽様がいらっしゃるなら、私などに出る幕はありません。それに神楽様ほどの方ならば、誰も口を挟む者はいないでしょう。諸将への説明は私がいたします。新帝のために、この大役を引き受けては下さいませぬか?」
 神楽は考え込む様子を見せたが、阿部にはそれはあくまでポーズに過ぎないことは分かっていた。そして神楽の口から出た言葉は、正に阿部が予想していた通りのものだった。
「ううむ、そうか、そこまで言われるか。それならば幼き陛下をお助けするためにも、喜んで引き受けましょう」
「これで幕府には勝ったも同然です。偽帝を掲げる不埒な輩を罰するためにも、何卒よろしくお願いいたします」
「分かっている。阿部殿もよろしく頼むぞ」
 そう言って大きく息を吐き出すと、神楽は袖から扇子を取り出してゆっくりとあおぎ始めた。
「風呂と寝室を用意してございます。まずは疲れを落とされると良いでしょう」
「おお、ご苦労。気が利くな」
「それではこれにて失礼いたします」
 そして阿部は河原崎と共に退室した。

「これで大体の準備は整ったな」
 神楽の元を離れて別室に移ると、阿部はそう呟いた。
「あんな白々しい言葉、よく真に受けるものだな」
 河原崎は先程の神楽の様子を思い出して言った。
「あんたもよくやってくれた。だがまあ、あの男は自分にとって都合の良い話なら、どんな大根役者にだって喜んで騙される男だからな。しかしこれで奥に引っ込んでおいてもらうことができる。役立たずにチョロチョロと動かれて計画を狂わされるのは御免だ」
「強大な敵よりも無能な味方の方が恐ろしい、か」
「そういうことだ。それよりもあんたには先陣を切ってもらう」
「ほう?」
 河原崎は興味を惹かれたようで、阿部の顔を真っ直ぐに見た。
「いずれ黒田達が来れば、あんたはあんたの好きな相手と存分にやってもらって構わない。ただ、それまでは実質的な司令官として動いてもらうことになる。先帝の縁戚というだけで何の役にも立たない大名しかいないこの砦で、今のところまともに軍を動かすことができるのはあんただけだ。だが、いかに幕府に関わりがないとは言え、護兵と半貴族で構成されたこの軍の中で、あんたの存在は浮いてしまっている。だから一度、その力を見せる必要がある。お望みの御剣ではないが、ここは我慢してくれ」
「そうだな、御剣までの肩慣らしに、少し遊ばせてもらうとするか」
「ああ、頼むぞ。何しろ俺は表に出るわけにはいかないからな」
 そういうと阿部は壁に貼り付けてある地図の方へと向かった。
「まずはこの丘の東側に二千の兵を連れて伏せていてくれ。二、三日中に幕府は砦の南に陣を張るはずだ。そうしたら十白を送るから、本陣を攻めてくれ。ただし深入りはしなくて良い。これはあくまであんたの力をこの砦の連中に見せ付けるだけのものだ。二百も斬ったら、砦へ戻ってくれて構わない」
「わかった、いいだろう」
 そう言うと河原崎は退室した。そして半日としないうちに部隊をまとめ、砦を出発した。

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